自動車整備士を目指すにあたって、どこかで「自動車整備主任者」という名称を聞いたことはありませんか?
本記事では、自動車整備主任者における概要や仕事内容、選任されることで得られるメリットなど詳しく紹介していきます。
自動車整備主任者とは
「自動車整備主任者」とは、自動車整備工場が国から「認証工場」もしくは「指定工場」の認定を受ける際、事業者が必ず1名以上選任しなければならない役職のことです。

自動車整備主任者という資格自体はありませんが、選任されるためには特定の資格を保有したり、研修を受けたりするなど条件を満たす必要があります。
車が正しく整備されているか、安全性に問題はないかといったことを確認する役割を持っているので、非常に重要なポジションとなっています。自動車整備士や自動車検査員と同じく、整備工場にとって欠かせない存在です。
自動車整備主任者の仕事内容
自動車整備士に比べると、自動車整備主任者の仕事内容はあまり知られていないため、この機会にしっかり確認しておきましょう。
整備のチェック
自動車整備主任者の主な仕事は、分解整備や電子制御装置整備における作業の管理や整備が終わった後の車をくまなくチェックし、国が定めた保安基準を満たしているか確認することです。
1つでも不備を見逃すと大事故につながる可能性もあるので、責任重大な仕事となっています。車に関する知識はもちろん、仕事の正確さや集中力の高さも大切です。
特定整備記録簿の記入・管理
「特定整備記録簿」とは、車のどの部分を整備・点検したのか細かく記録するための書類のことをいいます。
この特定整備記録簿に点検や修理をした内容を記入したり、書類をまとめて管理したりすることも自動車整備主任者の仕事となります。
受入検査・中間検査・完成検査
指定工場の場合、車の分解整備に加えて車検をおこなうことがあります。車検では受入検査・中間検査・完成検査の3つを実施します。このうち、完成検査は自動車検査員が担当しますが、受入検査と中間検査は自動車整備主任者が担当します。 受入検査では外装のチェックや書類作成、中間検査では指示書通りに整備・点検がおこなわれているかを確認します。整備や点検は自動車整備士がおこなうので、監督業務や事務手続きがメインとなるでしょう。


自動車整備主任者のメリット
自動車整備主任者に選任されれば、以下のようなメリットを得ることができます。
仕事の幅が広がる
自動車整備主任者になると車の分解整備だけではなく、保安基準の適合チェックや分解整備記録簿の管理、車検の指示書作成など幅広い仕事に携わることができます。
責任感のある仕事でやりがいがある
自動車整備主任者になると仕事の幅が広がるため、仕事に対する責任も大きくなりますが、その分やりがいを感じることができるでしょう。現場を統括するような仕事にも携わるため、自動車整備士では得られない経験を積むことも可能です。
キャリアアップできる
自動車整備主任者として1年以上の実務経験を積み重ねれば、自動車検査員へのキャリアアップを目指すことが可能です。自動車検査員は指定工場における業務独占資格なので、自動車整備士よりも待遇面で優遇される可能性もあります。
自動車整備主任者の選任条件と届出受理までの流れ
自動車整備主任者は資格ではないため受験条件はありませんが、選任されるためには以下の条件を満たす必要があります。
選任条件
電子制御装置整備を含む特定整備の自動車整備主任者の選任条件として認められるには、「1級自動車整備士(二輪を除く)」もしくは「1級(二輪)、 2級自動車整備士、自動車車体整備士、自動車電機装置整備士で講習を受けた者」である必要があります。以前まで筆記試験等はありませんでしたが、令和2年4月1日の法改正により、1級自動車整備士(二輪を除く)でない場合には「学科(電子制御装置整備に係る法令等)」「実習(エーミング作業等)」の受講後に「試問(筆記試験)」に合格する必要があります。
※学科に関しては後述する「整備主任者法令研修」に同様の内容が含まれていれば受講したものと見なされます。
届出受理までの流れ
自動車整備主任者に選任されたら、資格取得のために届出を行う必要があります。所属する整備工場の事業者から選任されただけでは、自動車整備主任者として正式に認められません。選任後、事業者から各都道府県の運輸局へ届出をして、なおかつ受理されることで主任者として業務にあたることができます。
この選任については「選任が予定されている」という状況でも構いません。
自動車整備主任者になるための講習と試問
自動車整備主任者になるための講習と試問については以下の表で解説します。
学科 | 実習 | 試問 | |
講習内容 | 自動車特定整備事業(電子制御装置整備に係る項目に限る。)に係る法令等に関すること | 電子制御装置整備に関し、保有する自動車整備士の技能検定において不足する知識及び技能を補うものであって、受講者自身による実務として発生する整備作業(エーミング作業)を含むこと。
なお、エーミング作業に関する実習にあっては受講者参加型とする |
学科及び実習の講習を受講した者に対して筆記試験を行う |
講習時間 | 1時間以上 | 原則3時間以上
(ただし、受講者の保有する自動車整備士資格及び受講人数を勘案し、状況に応じて実習時間を短縮可能) |
30分 |
講習人員 | 会場の設備(緊急時の避難等安全確保策を含む)及び受講者の管理等を考慮した適切な数とすること | 同時に講習を受ける者の数は、原則、車両 1 台あたり 25 名以下とすること | 会場の設備(緊急時の避難等安全確保策を含む)及び受講者の管理等を考慮した適切な数とすること |
学科及び実習の講習を受講後、試問の結果が正答率 80%以上であれば講習修了者となります。
自動車整備主任者を続けるために必要な研修
自動車整備主任者を続けるためには、毎年度1回、自動車整備主任者研修を受講する必要があります。整備主任者法令研修および整備主任者技術研修という2種類の研修について、それぞれ解説していきます。
整備主任者法令研修
整備主任者法令研修は、自動車整備主任者に選任された方全員が受講しなければならない研修です。整備主任者の業務に必要な自動車の構造・機能、分解整備に関する法令や通達、自動車業界の動向などについて学習します。
整備主任者技術研修
整備主任者技術研修は、各整備工場につき1名以上の自動車整備主任者が受講しなければならない研修です。自動車の新機構や新装置に関する講義に加えて、一定のテーマに基づく実技研修がおこなわれています。
これらの研修は年1回開催されるため、毎年受講する必要があります。受講しなかった場合、整備工場に対して監査が入ったり、認証工場・指定工場の認定を外されたりする可能性があるため、忘れないようにしましょう。
おわりに
自動車整備主任者は条件を満たせば誰でも就けるものではなく、選任されることで初めて役職を名乗ることができます。そのため、知識や経験を積み重ねることはもちろん、事業者から信頼・高評価を得ることも大切です。