認証工場と指定工場の違い・仕事内容を解説

業界情報

整備士の就職先として最も多い自動車整備工場には、「認証工場」と「指定工場」の2種類があります。それぞれ仕事内容が異なるため、どちらを選ぶかは好みや能力などによって適性が異なります。

そこで本記事では、認証工場と指定工場の違いや仕事内容をご紹介します。これから整備工場に就職しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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認証工場と指定工場の違い

認定工場と指定工場はどちらも整備工場ですが、5つの異なるポイントがあります。それぞれの違いは、以下の通りです。

地方運輸局長からの承認に関して

認証工場とは地方運輸局長からの承認を得て、車を分解して整備・点検が可能な「特定整備」(※)を行うことができる工場です。認証工場の承認を得た上で、さらに申請を行って地方運輸局長に「指定自動車整備事業」の指定を受けると、指定工場となります。
※「特定整備」:2020年4月より「分解整備」から名称変更

従来の分解整備(原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、連結装置を取り外して行う自動車の整備又は改造:道路運送車両法第49条第2項、同施行規則第3条)に、電子制御装置整備が加わり、名称も「特定整備」に変更されました。施行から4年間の経過措置期間があり、従来通りの分解整備のみを行うパターンの認証も可能です。

指定工場に指定されるには設備、技術、管理組織等で一定の基準を満たす必要があるため、認証工場の承認を受けるよりも狭き門だと言えるでしょう。

車検を行う上での違い

認証工場では車検のための点検・整備や、特定整備を行うことができますが、工場内で車検のための検査をすることはできません。対して指定工場では、特定整備から車検の検査まで行うことが可能です。検査が終了すれば書類を陸運局に提出し車検証が発行されるため、認証工場で必要な整備後に車検場に持ち込む必要がありません。

必要な作業場

認証工場と指定工場では、定められている作業場の大きさも異なります。必要な作業場の面積は、以下の通りです。

事業の種類 対象自動車の種類 認証工場 指定工場
屋内作業場 車両置場 屋内作業場



車両整備作業場 部品整備作業場 点検作業場 現車
作業
部品整備
間口 奥行 間口 奥行
普通自動車分解整備事業 普通自動車(大型) 5㎡以上 13㎡以上 12㎡以上 5㎡以上 13㎡以上 3.5㎡以上 11㎡以上 130㎡以上 12㎡以上





















大型特殊
普通自動車
(中型)
5㎡以上 10㎡以上 12㎡以上 5㎡以上 10㎡以上 3.5㎡以上 8㎡以上 100㎡以上 12㎡以上
普通自動車
(小型)
4.5㎡以上 8㎡以上 10㎡以上 4.5㎡以上 8㎡以上 3㎡以上 6㎡以上 72㎡以上 10㎡以上
普通自動車
小型四輪自
動車
小型三輪自動車
4㎡以上 8㎡以上 8㎡以上 4㎡以上 8㎡以上 3.3㎡以上 5.5㎡以上 64㎡以上 8㎡以上
小型自動車分解整備事業 小型二輪自動車 3㎡以上 3.5㎡以上 4㎡以上 3㎡以上 3.5㎡以上 2㎡以上 2.5㎡以上 21㎡以上 4㎡以上
軽自動車分解整備事業 3.5㎡以上 5㎡以上 6.5㎡以上 3.5㎡以上 5㎡以上 2.5㎡以上 3.5㎡以上 35㎡以上 6.5㎡以上

出典:関東運輸局ホームページ

必要な設備

認証工場で必要な設備は、以下の表の通りです。

機械設備名 原動機 動力伝
達装置
走行装置 操縦装置 制動装置 緩衝装置 連結装置
作業機械 プレス
エア・コンプレッサ
チェーン・ブロック
ジャッキ
バイス
充電器
作業機械 ノギス
トルク・レンチ
点検計
器およ
び点検装置
サーキット・テスト
比重計
コンプレッション・ゲージ
ハンディ・バキューム・ポンプ
エンジン・タコ・テスタ
タイミング・ライト
シックネス・ゲージ
ダイヤル・ゲージ
トーイン・ゲージ
キャンバ・キャスタ・ゲージ
ターニング・ラジアス・ゲージ
タイヤ・ゲージ
検車装置
一酸化炭素測定器
炭化水素測定器
工具 ホイール・プーラ
ベアリング・レース・プーラ
グリース・ガンまたはシャシ・ルブリケータ
部品洗浄槽

出典:国土交通省ホームページ

分解整備と電子制御装置整備の両方を行う場合には下記が必要

  • 電子制御装置点検整備作業場
  • 整備用スキャンツール
  • (水平面を確認するための)水準器
  • 整備要領書等の点検整備に必要な情報の入手体制

出典:国土交通省ホームページ

指定工場では上記に加え、以下の設備が必要となります。

  • ホイール・アライメント・テスタまたはサイドスリップ・テスタ
  • ブレーキ・テスタ
  • 前照灯試験機
  • 音量計
  • 速度計試験機
  • 一酸化炭素測定器
  • 炭化水素測定器
  • 黒煙測定器またはオパシメータ

必要な人員(有資格者)

認証工場と指定工場では、必要とされている人員も異なります。必要な有資格者や人員数は、以下の通りです。

認証工場に必要な人員数は、2人以上です。その内、1級または2級の自動車整備士技能検定に合格している整備主任者が、1人以上いなければなりません。また、3級以上の自動車整備士技能検定に合格している整備士の人員数が、整備を行う人員(自動車工)の4分の1以上である必要があります。

指定工場では、整備主任者として1年以上の実務経験があるなどの基準を満たした「自動車検査員」を1人選任しなければなりません。必要な人員数は4人以上で、整備士の人員数は自動車工の3分の1以上である必要があります。ただし車両総重量8t以上、最大積載量5t以上および乗車定員30人以上の車両を対象とする場合は、5人以上の人員が必要です。

※分解整備と電子制御装置整備の両方を行う場合

  • 2名以上、うち1名は『一級自動車整備士(二輪除く)』又は『一級二輪自動車整備士若しくは二級自動車整備士であって、国が定める講習を受講した者』
  • 従業員に対する、自動車整備士数の割合が1/4以上であること

出典:国土交通省ホームページ

認証工場での仕事内容

整備士を志望している方のなかには、認証工場と指定工場のどちらで働くべきか悩んでいる方も多いでしょう。ここでは、認証工場の仕事内容や向いている人をご紹介しますので、工場を選ぶ際の参考にしてみてください。

認証工場での仕事内容

認証工場で日常的に行われている仕事は、主に「点検整備」「緊急整備」「特定整備」の3つに分けられます。それぞれの仕事内容は、以下の通りです。

点検整備

劣化や不具合などがないかを点検、整備する作業。オイル交換やタイヤ交換などの簡単な作業も含まれます。車検前に行われることが多く、定期的に点検を行うことで事前に事故を防ぐ目的があります。

緊急整備

事故による故障やアクシデントが起こった際に行われる作業。故障した部品の交換や、修理が行われます。

特定整備

自動車の安全走行に大きく影響を与える装置を分解して整備する作業。主にエンジンやミッション関係の装置の整備を行います。また電子制御装置整備に関連し、スキャンツールをつないでのエーミングやカメラ・レーダーの取り外しなども行います。

認証工場は車検のための検査ができないため、上記の3つの仕事以外にも陸運局などの車検場への車の持ち込みも仕事内容に含まれます。

認証工場での業務に向いている人

認証工場で働く上で重要なのは、観察眼のするどさだと言えるでしょう。1つのミスが自動車事故や故障などの危険を招いてしまうので、細かい部分に気付く注意力や仕事に対する丁寧さが必要になります。

また、自動車の整備では大きな部品の交換などの力仕事も多いため、体力があることも重要です。さらに、お客さんに車の整備・修理内容を説明する機会もあるため、ある程度コミュニケーション能力もあった方が良いでしょう。

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指定工場での仕事内容

指定工場の仕事内容や向いている人は、以下の通りです。

指定工場での仕事内容

指定工場での仕事内容は「点検整備」「緊急整備」「特定整備」の3つに加えて、車検検査ができるという点で認証工場の仕事内容と大きく異なります。そのため指定工場のなかには車検取得やそのための整備を中心に行っていて、修理を行っていない工場もあります。

工場によって仕事内容が大きく異なる可能性があるので、車検検査の他に故障修理やオイル交換などの簡単な作業も請け負っているか事前に確認しておくと良いでしょう。

指定工場での業務に向いている人

基本的に認証工場と仕事内容の共通する部分も多く、観察眼や体力、コミュニケーション能力は指定工場で働く上でも重要視されます。

しかし指定工場では自動車の点検・整備・車検検査など、自動車の整備全般を扱っているため、業務を一から学びたい方や初めて整備工場で働く方に向いています。また、車検検査の最終段階である「完成検査」ができる自動車検査員を目指す方も、指定工場が向いていると言えるでしょう。

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おわりに

自動車の点検・整備を行うことのできる認証工場と指定工場は、どちらも地方運輸局長の承認を得ている点では同じですが、車検検査が可能か否かという点で大きく異なります。修理や整備などを中心に行いたい場合は認証工場を、自動車の修理から車検検査まで整備全般を行いたい場合には指定工場を選ぶと良いでしょう。

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