車のエンジンに欠かせないEGR(排気再循環)とは?

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エンジン内での燃焼によって動力を得る自動車は、燃料の消費と排気ガスの発生を避けることができません。燃料消費量が増えると経済性が損なわれるだけでなく、環境保護の観点でも問題が生じます。また、排気ガスには人体に有害な成分も含まれるため、そのまま空気中に排出することのないよう工夫が求められます。そこで自動車メーカーはさまざまな方法で燃費向上対策と排気ガスの浄化策を行ってきました。

そんな中、近年の自動車のエンジンに欠かせなくなっているのが、EGRと呼ばれる装置です。この記事では、車の排気ガス対策と燃費向上に役立っているEGR(排気ガス再循環装置)についてご紹介します。

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EGRとは?

EGR(EGRシステム)とは、「Exhaust Gas Recirculation」の頭文字を取った略称で、直訳すると「排気ガスの再循環」という意味になります。
いったん排出された排気ガスを再度吸気ポートに戻し、燃焼室に送る仕組みがEGRです。排気ガスをできるだけ直接排出しないことで、ガソリンエンジン車の場合は特に燃費の向上に役立ちます。またディーゼルエンジン車の場合は、排気ガス内に含まれる有害物質NOx(窒素酸化物)の排出を減らすことができます。

EGRを採用する目的は?

現代の自動車におけるエコロジー技術として、欠かせなくなっているEGR。EGRは、どのような目的で自動車に取り入れられているのでしょうか。

窒素酸化物(NOx)の低減

自動車の排気ガスに含まれ、人体に有害であるとして世界的に削減が提唱されている窒素酸化物(NOx)。EGRによって排気がエンジンの燃焼室に再度送られると、燃焼室内の酸素濃度は低くなります。燃焼室内の酸素濃度が低下することで、燃焼温度を下げることが可能です。NOxは、空気に含まれる窒素と酸素が高温で反応して生成されるため、燃焼温度を下げることでNOxの排出を抑制することができます。
代表的な窒素酸化物であるNO2(二酸化窒素)は、人が吸うことで喉や肺などの呼吸器に悪影響を及ぼすことが分かっています。排気ガス中の窒素酸化物の含有量を低減することによって、排気ガスによる健康被害を減らすことにつながるのです。

燃費性能の向上

EGRによって排気を循環させるメリットは、有害物質の削減だけではありません。自家用車を利用する人にとっては非常に身近な問題である、燃費の向上も果たすことができます。
先に述べたとおり、EGRを用いることで燃焼温度の低下が実現できます。燃焼温度が下がることで冷却による損失を軽減でき、吸気中の酸素濃度も下がることでスロットル開度が大きくなるためスロットル損失も抑えられます。これらのはたらきによって、燃費効率の向上を果たすことができるのです。
また燃料消費量が少なくなることは、有害物質の排出をさらに減らすことにもつながります。

エンジン別にみるEGRシステムの仕組み

自動車のエンジンには、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあります。そのいずれにもEGRは用いられていますが、それぞれのエンジンにおいてEGRはどのような仕組みで動作し、効果を得られるのでしょうか。

ガソリンエンジンの場合

ガソリンエンジンにおいては、排気ガスが最初に排出される排気管のエンジンからなるべく近い箇所にEGR通路が設置されています。近くに設置する理由は、導入レスポンスを向上させるためです。燃焼済の不活性ガスがEGR通路を通ってスロットル下流より導入され、それぞれのシリンダーへ均一に吹き込まれます。

なお、ガソリンエンジンにおけるEGRの効果は、有害物質低減よりもどちらかといえば燃費向上への寄与が中心です。三元触媒によって排気ガス内の有害物質はかなり低減できるためで、EGRの仕組みは冷却損失およびポンピング損失を少なくして燃費を向上できることに主眼が置かれています。

ポンピング損失を低減するエンジンの仕組みとして、過去には「アトキンソンサイクルエンジン」や「リーンバーン(低燃焼エンジン)」が用いられたこともあります。しかし、EGRはそれらより仕組みが簡素で導入しやすいメリットを備えています。

ディーゼルエンジンの場合

ディーゼルエンジンのEGRシステムは、ガソリンエンジンの場合よりかなり複雑です。この理由ですが、ディーゼルエンジンには必ず過給機が組み合わされているためです。

過給エンジンは排気ポートと吸気ポートの差圧が小さく、吸気圧の低い箇所=過給機の上流へEGRを導入することが望ましいとされています。また同時に、ディーゼルエンジンの排気ガスには煤が多く、排気の通路が詰まりやすくなりがちです。このため、EGR通路を設置する箇所は触媒の下流となります。ディーゼルエンジンのように過給機を備えたエンジンは、吸気温度が上昇しやすいという特徴も持っています。燃焼済ガスの温度を下げるため、EGRクーラーの設置も必要となります。

EGRがディーゼルエンジンにもたらすおもな効果は、NOxを減らすことです。なぜならディーゼルエンジンにはスロットル弁が備わっておらず、元々ポンピング損失はほぼないとされているためです。ただしディーゼルエンジンのNOxをEGRによって低減しようとすると、酸素の減少によって煤(すす)成分が増加し、PM(粒子状物質)と呼ばれる有害物質が増えてしまうという弊害があります。NOxを減らそうとすればPMが増え、PMの減少を考えるとNOx対策ができなくなるという難問を抱えているのです。
このため、ディーゼルエンジンの排気中の有害物質除去を総合的に考えるには、EGRに加え、触媒や燃焼制御技術などの性能・精度を高める取り組みも同時に必要となります。

EGRの導入方法

EGRの構造には大きく分けて、内部EGRと外部EGRの2通りがあります。ここでは、それら2つの特徴や役割をご紹介します。

内部EGR

内部EGRは、可変バルブタイミング機構を利用します。吸排気バルブの開閉タイミングを調節することで、排気ガスの逆流により燃焼室の温度を上げたり、ガスを燃焼室内に残して吸気を減らしたりすることでポンピングの損失を低減させる仕組みです。電子制御スロットルバルブが普及したことで、内部EGRが多くの車種に用いられるようになりました。
可変バルブタイミング機構は従来ある技術のため、そのコントロールによって実現可能な内部EGRは、コスト面でもメリットの大きな手法といえます。ただし、コントロール可能な領域はそれほど幅広くなく、この後ご説明する外部EGRと比較すると制御の精度は劣ってしまいます。

外部EGR

外部EGRは、排気管から排出されるガスをいったん取り出し、パイプによる経路で吸気系に再度導入する方式です。ガスの流量を調節したり、EGRクーラーでガスの温度を下げたりするなど、細かな調整がしやすいメリットがあります。しかし、エンジンの外に専用の管を取りまわすという特性上経路が長くなりがちなため、レスポンスの遅れが出やすくなるデメリットも存在します。

内部EGRと外部EGRにはそれぞれにメリットとデメリットがあり、各手法のメリットを生かしデメリットを抑えながら効果を得る必要があります。最適な効果を得られる手段は、外部EGRと内部EGRをバランスよく組み合わせることといわれています。

まとめ

EGRの仕組みは、以前から取り入れられている基本的な技術の1つです。しかし、自動車の排気ガスに関する規制は年々強化され、それに対応するために「EGRのコントロール精度の高度化」も年を追うごとに求められることとなりました。現在では、排出ガス内の有害物質を低減するため、あるいは燃費向上のためにEGRは欠かせない技術です。
特に近年は、排気ガスの温度を冷却水によって低くしてEGRの効果をより高めるEGRクーラーをプラスした、「クールドEGR」が幅広く取り入れられています。

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