車の燃費に影響する「理論空燃比」とは

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皆さんは「空燃比」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。車好きの方であるならばご存じの方もいらっしゃると思います。しかし普段から車を利用していても、特別車に関心を持っていない方にとっては、まだまだ聞きなじみのない言葉かと思います。

「空燃比」は車の性能を語るうえで欠かせない用語です。
そこでこの記事では、空燃比とは何なのか、また、どのような状態を目指すべきなのかについて詳しく解説していきます。

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理論空燃比とは

それでは理論空燃比とはどういった意味なのかを説明します。

空燃比とは

空気とガソリンが混ざり合った混合気における「空気とガソリンの比率」のことを空燃比といいます。車やバイクのようなエンジンの内燃機関は、燃料と空気中の酸素を反応させることで動力を得ているので、機関中の燃料と空気の比率は燃費や排気ガスの観点からも非常に重要なポイントになります。

理論空燃比とは

混合気体中の酸素と燃料が、過不足なく反応するときの空燃比を理論空燃比といいます。自動車に使われているガソリンエンジンの理想的な空燃比は1:14.7といわれており、この比率は重量比率で空気14.7のときガソリンが1で反応させることを意味しています。
混合気中が理論空燃比のとき、混合気中の酸素と燃料が過不足なく反応しているので、最も燃焼効率が良くなるなどのメリットがあります

濃い混合気の状態(リッチ)

理論空燃比よりも燃料の比率が多いときをリッチと呼び、出力を稼ぎやすく発進時や加速時に用いられます。エンジンがリッチの状態にあるときエンジンの熱負荷を冷却して抑えることができるので、高回転したエンジンで利用されることもあります。

薄い混合気の状態(リーン)

反対に理論空燃比よりも燃料が少ない状態をリーンと呼びます。燃費においては有利な状態であり、有害物質の排出が少なくなるなどのメリットがあげられます。

排気ガスに含まれる成分と特性

燃料エンジンを搭載している車を運転する場合、多少なりとも排気ガスを排出してしてしまいます。その排気ガスに含まれる成分にはどういったものがあるのでしょうか。

CO(一酸化炭素)

有機化合物が酸化する際に酸素の供給量が不十分な不完全燃焼になると発生します。人体に害をおよぼす毒性があるので注意が必要です。本来Cが完全燃焼した際CO₂が発生します。車などのマフラーから排出されるCO₂が増加するということは、ガソリンなどの多くを構成しているCが完全燃焼したということになります。

HC(炭化水素)

ガソリンの揮発や燃焼が不完全で燃焼できなかった混合気体が排出されると発生します。そのままでは害は少ないのですが、太陽光に当てられると紫外線成分と反応し、光化学オキシダントへと変化します。光化学オキシダントは光化学スモッグを発生させ、人体に入ると呼吸器などの粘膜への刺激、農作物への悪影響もおよぼします

NOx(窒素酸化物)

その名のとおり窒素が酸化することによって発生します。窒素は高温・高圧の状態になる燃焼室では酸化しやすくなります。窒素酸化物は酸素の結合量によって種類が変化し、それぞれの窒素酸化物をまとめて排出しています。

PM(粒子状物質)

マイクロメートル単位の粒子であり、大気中に浮遊しているものも、この粒子状物質と呼ばれます。吸い込んでしまうと呼吸器系に付着し、呼吸器疾患の原因となってしまうことがあります。そのため大気汚染の激しい地域では大気中のPMの測定が定期的に行なわれています。

CO₂(二酸化炭素)

有機化合物の燃焼によって発生します。マフラーから排出されるCO₂の割合が増加するということは、ガソリンなどの燃料が完全燃焼されているということなので、燃焼効率の高さを証明することにもつながります。

ガソリン空燃比について

ガソリンの空燃比やディーゼルエンジンとの違いを解説します。

ガソリンのおける理論空燃比について

ガソリンと空気の比率を理論空燃比(空気14.7のときガソリンが1)に近づけることによって、燃料の完全燃焼できる割合が大きくなります。すると排気ガス中の有害物質を減らす、運転をしやすくする、燃費を良くするなどを成立させることができます。

ディーゼルエンジンとの違い

一般的にエンジンというと「ガソリンエンジン」になります。その名のとおりガソリンを燃料にしていますが、ディーゼルエンジンの場合はガソリンエンジンと違って「軽油」を燃料にしています。一般的に同じ車体にガソリンエンジンを搭載した場合とディーゼルエンジンを搭載した場合を比べても、ディーゼルエンジンのほうが燃費は優れています。

三元触媒について

三元触媒とは「排気ガスに含まれるCO、HCのような有害物質を浄化する」触媒のことです。三元触媒が理論空燃比の条件下において、酸化性のガス(NOx、O₂)と還元性のガス(H₂、CO、HC)が同じ量あるとみなせるため、酸化還元反応によって無害な排出ガス(CO₂、H₂O、N₂)にすることができます。この三元触媒の反応はA/Fセンサーの開発により、エンジンの空燃比を精密に制御できるようになったことで実用化されるようになりました。

あえて燃料が少ない状態で走る「リーンバーン」とは

リーンバーンとは

リーンバーンとはエンジンが吸い込む空気量はそのままにして、投入するガソリンの量を極限まで減らして薄い混合気を作り、これを素早く燃やすことによって燃費を向上させる技術です。

なぜ燃費が向上するのか

通常のガソリンエンジンは理論空燃比で燃料を燃やしているので、混合気中では燃料1gに対して空気が14.7g必要になります。一方リーンバーンの場合、必要な空気量はそのままでガソリン量を減らすことで、短時間内で一斉にガソリンを燃やすことができます。これにより燃焼温度が大きく減少し、冷却水に奪われる熱量が減るため、燃費の向上につなげられます

空燃比が狂ってしまうとどうなる?

これまで空燃比について述べてきましたが、空燃比が狂ってしまった場合どのような現象が起こるのかを解説します。

空燃比が濃い場合

空燃比が濃い場合では出力が高くなることが多く、発生する熱量も膨大になります。すると必然的に放熱が間に合わなくなってしまい、排気バルブやピストンなどの機関が溶損してしまう恐れがあります。また高い出力時には排出温度も高いので、三元触媒が加熱され溶損してしまう可能性もあります。

空燃比が濃くなる原因

空燃比自体は運転の最中に刻一刻と変化していくので、ある一定の空燃比で固定するのには無理があります。例えばエアクリーナーを何年も変えずに運転していた場合などは、吸気の抵抗が大きくなってしまい空燃比が濃くなる原因となります。現代の車はよほどのことがなければ、使用していて性能が悪くなっていくということはありませんが、エアクリーナーの経年劣化は避けることができないので、定期的に交換することをおすすめします。

空燃比が薄い場合

空燃比が濃い場合と比べて、排出温度が高くなるのを防ぐことができます。リーン状態での運転は燃費が悪化し、三元触媒が働かなくなるなどの弊害も起こってしまいます。また、空燃比が薄い状態での運転を避けるようにすれば、スロットルやマフラーから炸裂音が鳴ったり、回転数が不安定になったりしてエンストするのを回避できます。

空燃比が薄くなる原因

空燃比が薄くなる原因としては、燃料にかかる圧力が不足していることが考えられます。通常、車のインジェクターには燃料ポンプによって常に一定の圧力がかかっています。しかし経年劣化などによってうまく作動しなくなると、燃料にかかる圧力にも誤差が生じる可能性があります。ちゃんとチューニングをしている車であっても、空燃比がバラバラになってしまわないようにすることが大切です。

理論空燃比を計測するセンサー

理論空燃比を測る際、主なセンサーは2種類あります。それぞれのセンサーの特徴を見てみましょう。

O₂センサー

燃焼後の排気ガスの含まれる酸素の濃度を計測しています。O₂センサーは燃焼時に燃料と反応せずに排出された酸素の濃度を計測することができます。O₂センサーの場合、酸素の測定の幅が大きく、排出された酸素量が濃いか薄いのかといった大まかなことを計測するのに向いています。

A/Fセンサー

A/Fセンサーとは排ガスの中の酸素の濃度を調べることができる部品のことです。排ガスを測定するセンサーとしてはO₂センサーもありますが、O₂センサーよりも高性能な部品がA/Fセンサーになります。A/Fセンサーでは流れる電流値の変化により、排ガス中の酸素イオンの増大を測定することができ、これにより細かい空燃比を測定することを可能にしています。

おわりに

空燃比を理想の状態に保つことによって、燃費も良く、人体に有害な排気ガスも減らすことができます。また近年では企業の開発によって、理想空燃比の状態よりも効率的に運転することができるディーゼルエンジンなども実現しています。

もちろん新しい車を購入せずとも、定期的に車のメンテナンスを行なうことで、燃費が良く人体にも害のない車で運転することも十分に可能です。

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