自動車整備士の仕事といえば、工業高校や専門学校などで学び整備士資格を取得した上で就職し、働いているケースを想定するかと思います。自動車やその構造に興味があり整備士を目指したくても、学校で資格を取得していないためあきらめているという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、資格や実務経験がなくても自動車整備士として働けるか、また仕事をしながら自動車整備士の資格を取得できるかについてご紹介します。
無資格・未経験でも自動車整備士になれる?
まずは、自動車整備未経験で資格を持っていなくても整備士として働けるかについてご紹介します。
無資格・未経験でも整備の仕事はできる
資格を持っておらず、実務経験のない方であっても、自動車整備を行っている企業に就職して整備の仕事をすることは可能です。実際に未経験者・無資格者の方が働く多くの整備工場では、有資格者と無資格者や未経験者で仕事内容を区別しています。その上で、無資格・未経験の方はその範囲内でできる整備の仕事を受け持っています。
基本的に、資格や経験がなくても整備士の仕事をすることは可能なため、ご自身に合う求人を見つけたらチャレンジを検討してみてはいかがでしょうか。
未経験・無資格でもできる整備とは?
資格を持っていなくてもできる自動車整備の仕事には、タイヤ交換やエンジンオイル交換、板金塗装に関する業務などがあります。自動車整備工場では時季を問わず頻繁に行う作業のため、有資格者ではなくてもこれらの作業者を求めている企業は多いはずです。
資格を持っていないとできない整備とは?
タイヤ以外の足回りを整備する作業は、自動車整備士の資格を持っている人しか行えません。具体的には、ブレーキやサスペンションといった箇所の分解や交換作業などがそれにあたります。 また、エンジンの分解作業や、各種点検整備なども自動車整備士の有資格者が行わなければなりません。これらの高度な作業は資格がないと携わることができないため、一人前の整備士を目指すなら資格を取得することが必須となります。

無資格・未経験から整備士の資格を取得するためには?
資格を持っていない未経験の方が自動車整備工場に就職した場合、いずれは資格の取得を職場ですすめられるケースが多いでしょう。実際に、資格を持たずに就職した人が実務経験を積み、現在は資格を取得して活躍しているケースは非常に多くあります。
ここでは、無資格・未経験から自動車整備士の資格を取得するまでのステップをご紹介します。
まずは3級自動車整備士の取得を目指す
自動車整備士の資格には、3級自動車整備士、2級自動車整備士、1級自動車整備士があります。無資格・未経験から取得をめざせる自動車整備士の資格は、「3級自動車整備士」のみとなっています。その上級資格にあたる「2級/1級自動車整備士」の資格取得をめざすには、3級自動車整備士資格の取得から始める必要があるためです。ただし、3級自動車整備士は誰でも受けられる資格ではなく、試験を受けるためには受験資格を満たす必要があります。無資格・未経験から資格取得を目指す場合、受験資格について事前に確認しておきましょう。
3級自動車整備士の受験資格
自動車整備士過程のある学校を卒業していない方の場合、受験の条件として認証工場または指定工場で1年間の実務を経験する必要があります。実務においては、有資格者の指導のもとで分解整備などを行うことが含まれていなければなりません。
なお、機械工学に関係する学校(工業高校、工業系専門学校、工学系の大学など)を卒業している場合、必要となる実務経験の期間は6か月となります。
3級自動車整備士の試験内容や難易度に関しては、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。

自動車整備士に向いている人の特徴
自動車整備士の仕事は、車に対する深い理解はもちろん、手先の器用さや体力、責任感、向上心などさまざまな能力が求められます。ここでは、自動車整備士に向いている人の特徴をご紹介します。
車が好きな人
自動車整備士は、大前提として車が好きな人や車に関心のある人に向いているでしょう。自動車の点検・整備・修理を行うには、仕組みや構造を深く理解することが求められます。また、自動車業界は、電気自動車や自動運転車などさまざまな技術が急速に進展しているため、最新の車種や技術を常に学ぼうとする姿勢も大切です。自動車に対して興味を持っている人や、自分の手で車をいじることを楽しいと感じている人に向いているといえます。
手先が器用な人
自動車整備士は、非常に繊細で手先の細かい作業を行うことが多い仕事です。自動車の整備や修理を行う際、部品の組み立てや交換、調整など精密な作業が求められるため、手先が器用な人に向いています。また、作業の精度や確実に作業を進めていく丁寧さも、自動車整備士に必要とされる特徴です。
体力がある人
自動車整備士は、重い部品の持ち運びや立ちっぱなしの作業など、長時間身体を使う仕事です。エンジンやタイヤなどを持ち上げたり、重い工具を使って部品を交換したりと力仕事が多く、技術面だけでなく体力も求められます。また、車の下に潜り込んで作業することもあるため、腕・腰の筋力や持久力が必要です。最近では機械設備が充実してきて、整備士自ら重労働を担うことは少なくなってきましたが、繊細かつ集中力が欠かせない整備業務では体力があることに越したことはありません。
責任感や向上心がある人
自動車整備士には、お客様の大切な車を預かって点検・整備・修理を行うという大きな責任があります。万が一、車に異常があれば、重大な事故や故障につながってしまう可能性があります。自動車整備士の仕事は自動車の安全に直結するため、責任感や向上心がある人に非常に向いているでしょう。
無資格・未経験の方が整備士の就職先を選ぶ際のポイント
上述で未経験で資格を持っていなくても整備の仕事に就けると分かりましたが、いざ就職を考える上でどのような職場を選べばよいか悩んでしまう方もいるでしょう。
ここでは、無資格・未経験の方が整備の仕事をする際の就職先選びのポイントをご紹介します。
整備したい自動車で選ぶ
自動車にもさまざまな種類があるため、どんな自動車の整備に携わりたいか考えてみるとよいでしょう。車種から選ぶ場合は、その車種を取り扱っている職場を検討できます。あるいは「大型トラック」「一般乗用車」「軽自動車」など、ジャンルに応じて検討する方法もあります。
好きな自動車メーカーから選ぶ
ご自身が所有している自動車のメーカーや、かねて好きだった自動車メーカーの車種を取り扱っている職場を選ぶこともおすすめです。
給料や職場環境などの就業条件から選ぶ
「どんな自動車でも整備してみたい」「車は好きでも好きな車種やメーカーが特にない」といった場合、一般的な就職活動と同様に給与や働きやすさなどの環境から職場を選ぶ方法もあります。好きな車種やジャンルを扱う職場であっても、労働環境がよくなければ求人への応募を見合わせるかと思います。どのような検討条件があっても、まずは就業条件を加味して考えてみることを忘れないようにしましょう。
現在の整備士業界は売り手市場
現在、整備士として就職・転職を考える場合、明らかに求職者よりも求人のほうが多いという状況が想定される「売り手市場=就職・転職しやすい」といわれています。どのような理由で、売り手市場の状況となっているのでしょうか。
現代は深刻な整備士不足
少子高齢化が進み、労働人口自体が減っていることに加え「若者の自動車離れ」と呼ばれる、自動車に関心の薄い人の増加もみられます。このため整備士を志願する人自体が少なく、整備士のみならず自動車業界全体が深刻な人手不足に陥っています。
自動車整備士をはじめとする専門技能系の業務を担う人材を増やすため、厚生労働省において「専門実践教育訓練給付金」という給付金制度が設けられました。これは、平成26年(2014年)の雇用保険法改正にともない、従来の教育訓練給付金制度が拡充されたものです。具体的には、一定要件を満たす雇用保険に加入していた離職者の方が、厚生労働大臣指定の専門実践教育訓練講座認定学校で学ぶと、学費の50%(年間の上限40万円)が原則2年・最大3年までハローワークから支給されます。
この制度の対象には自動車整備士の養成も含まれており、人手不足対策としての国の取り組みの効果により人手不足改善の兆しはあるといわれます。ただし現状、まだまだ整備士の人材は足りていないといえるでしょう。

求人数が多い
人手が足りないことに加えて自動車が走っていない場所はほとんどなく、どこであっても自動車整備工場の需要は存在します。このため数多くの求人があり、求職者も比較検討して応募しやすい状況です。
全国に求人がある
全国のあらゆる地域でいつも求人があり、地元を離れずに働くことができます。逆に、住んでみたい土地に移住して整備士の求人を探し、就職や転職を実現することもできるでしょう。
大手自動車メーカーの競争率は高い
人手不足が続く自動車業界ですが、トヨタやホンダなど大手自動車メーカー系のディーラーは給与も高く、賞与や退職金などの待遇も良いため人気があります。これらの職場は、整備士としての就職・転職先として比較的「狭き門」になるといえます。
無資格・未経験の方が整備士への就職を成功させるには?
無資格・未経験で整備士として就職するには、どのような方法で就職活動を行うことがおすすめなのでしょうか。
「未経験歓迎」の求人を探す
整備士業界では人手不足が深刻化している状況から、未経験者を積極的に受け入れている企業も増えています。求人情報をこまめにチェックし、「未経験歓迎」の求人に応募することで、就職のチャンスを広げることが期待できます。また、無資格・未経験の方が成長できる体制が整っていることも重要なポイントです。定期的に研修を実施している、資格取得のための費用を一部負担してくれるといったサポート体制が整っているかを確認しておくと良いでしょう。
履歴書対策・面接準備をしっかりと行う
自動車整備士への就職を目指す場合、履歴書対策・面接準備をしっかりと行いましょう。特に資格や経験がない方は、「なぜ自動車整備士を目指したのか」「整備士としての適性があるか」を重視される傾向にあります。履歴書・面接を通じて、仕事に対する意欲や前向きな姿勢を伝えることが非常に重要です。無資格・未経験であっても、しっかりと事前準備を行うことで熱意や自分の強みをアピールすることができ、採用担当者へ良い印象を与えられます。
整備士専門の就職エージェントを利用する
就職活動をサポートしてくれる就職エージェントの利用がおすすめですが、なかでも整備士専門のエージェントに依頼するとよいでしょう。専門知識を持ったエージェントの担当者が就職活動のサポートから給与の交渉まで行ってくれるため、整備士としての就職成功の近道となります。
おわりに
資格がなく未経験でも、自動車整備士として働くことをあきらめる必要はありません。無資格・未経験から自動車整備士としてのキャリアをスタートさせ、いずれ資格を取得しキャリアアップを目指したい方法もあります。無資格・未経験で自動車整備士を目指していきたい方は、整備士専門の就職・転職サポートを行うレソリューションまでぜひお気軽にお問い合わせください。