車好きやメカニック好きで、自動車整備士を目指している方は少なくないでしょう。しかし「整備士=車を点検・整備する仕事」という漠然としたイメージはあっても、実際の仕事内容や2級自動車整備士と1級自動車整備士の違い、資格の取り方や難易度などを知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、整備士のなかでも2級自動車整備士の資格の取り方や合格率、仕事内容についてご紹介します。
2級自動車整備士とは
2級自動車整備士は、エンジンや足回りなどの分解整備を含めた整備を行うことができます。
3級ではできない、分解・整備・修理を行うことができ、一般的に整備士と呼ばれている方々は、2級自動車整備士の資格を取得して働いているケースがほとんどです。また、点検整備もでき、タイヤ交換などの簡単な作業から板金塗装などを請け負う場合もあります。
2級自動車整備士は、一般的な自動車の整備全般を行えるため、現場で求められることが多い資格です。そのため、自動車整備士のなかで最も取得者数が多い資格でもあります。自動車整備士として働きたいのであれば、まず取得しておきたい資格といえるでしょう。
1級資格と3級資格との違い
自動車整備士の資格難易度は、「1級>2級>3級」の順です。この3つのなかで最も難易度の低い3級自動車整備士は、タイヤ交換やオイル交換、簡単な点検などの基本的な整備しか許されていません。2級自動車整備士は3級自動車整備士よりも、分解や修理など高度な整備を行うことが可能です。また、3級自動車整備士が高度な整備を行う場合は、上位資格者の指示が必要ですが、2級の場合は単独で行えます。
対して1級自動車整備士は、2級自動車整備士よりも高度な整備を行うことができます。2級自動車整備士はジーゼル・ガソリン・シャシと資格が分かれていますが、1級保持者はすべての部品を整備することが可能です。
1級自動車整備士は、一般的な自動車の整備だけではなく電気自動車などの特殊な自動車の知見も証明できる資格です。そのため取得難易度も高く、自動車整備士のなかでも3%しかいないといわれています。
また、1級自動車整備士は整備士の育成や工場の安全管理体制などのマネジメント能力も必要とされるので、難易度が高い分需要の大きい資格です。
2級自動車整備士の資格の種類
2級自動車整備士には、4つの種類があり、それぞれの違いは以下の通りです。
2級自動車シャシ整備士
自動車のエンジンやボディ以外の場所を整備することができる資格で、主に足回りの分解整備を行います。
2級ガソリン自動車整備士
ガソリンエンジンで動く自動車の整備全般を行える資格です。足回りからエンジンの分解整備が可能になり、自動車の一通りの整備ができるようになります。また、2級自動車整備士のなかでも特に人気が高く、受験者数が多い資格でもあります。シャシやディーゼル車の基本的な整備も可能なため、自動車メーカー等で働く際は有利になるでしょう。
2級ジーゼル自動車整備士
ディーゼルエンジンで動く自動車の整備全般を行える資格です。2級ガソリン自動車整備士の資格を持っていればディーゼル車の整備は可能ですが、ディーゼル車についてより専門的な知識を得たい場合はこの資格を取得した方が良いでしょう。
2級二輪自動車整備士
オートバイや原動機付自転車の整備全般を行える資格です。二輪自動車の整備士資格としては最上位になります。
2級自動車整備士の受験条件と取得までの流れ
自動車整備士は、経験や学歴によって受験条件が異なります。また、2級自動車整備士の場合、受験条件は資格の種類によっても異なるので、以下で確認してください。
受験条件
2級ガソリン・ジーゼル・二輪自動車整備士
2級ガソリン・ジーゼル・二輪自動車整備士の3つにおいて、受験条件は以下の4つのパターンがあります。
- 自動車整備系の専門学校、認定大学等の「2級整備士養成課程」を卒業した場合:卒業と同時に受験可能
- 大学や専門学校で、機械学科等の機械関係の学科を卒業した場合:3級自動車整備士の資格取得後、1年6カ月以上の実務経験が必要
- 機械学科等の自動車関係の学科で高校・専門学校等を卒業した場合:3級自動車整備士の資格取得後、2年以上の実務経験が必要
- 専門学校や機械学科の学校を卒業していない場合:3級自動車整備士の資格取得後、3年以上の実務経験が必要
2級自動車シャシ整備士
2級自動車シャシ整備士の受験条件は、以下の4パターンがあります。
- 自動車整備系の専門学校、認定大学等の「2級整備士養成課程」を卒業した場合:卒業と同時に受験可能
- 大学や専門学校で、機械学科等の機械関係の学科を卒業した場合:3級自動車整備士の資格取得後、1年以上の実務経験が必要
- 機械学科等の自動車関係の学科の高校・専門学校等を卒業した場合:3級自動車整備士の資格取得後、1年6カ月以上の実務経験が必要
- 専門学校や機械学科の学校を卒業していない場合:3級自動車整備士の資格取得後、2年以上の実務経験が必要
資格取得までの流れ
次に2級自動車整備士を取得までの流れを解説します。
まず、資格取得するためには自動車整備振興会が実施している「自動車整備技能登録試験(登録試験)」を受験します。登録試験に合格し、2年以内に全免申請することで、自動車整備士の資格を取得することができます。
1.都道府県の自動車整備振興会で受験の申請を行う
試験の申請は、最寄りの自動車整備振興会で行います。 申込時に必要な書類は下記の通りです。 ・登録試験受験申請書 ・受験手数料(学科試験:7,200円、実技試験:14,000円 ※すべて税込) ・写真1枚(申請前6カ月以内に正面から撮影したもので、縦4.5cm、横3.5cmのもの) ・はがき(学科試験:2枚、実技試験2枚) ・受験資格を証する証明書 |
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2.自動車整備技能登録試験を受験する
【学科試験】 2級は筆記試験のみ 【実技試験】 一種養成施設の専門学校や高校・大学を卒業している場合は免除 |
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3.各都道府県の自動車整備振興会で申請の手続きを行う(全免申請)
【申請時に必要なもの】 (例)●●県自動車整備振興会 ・検定申請書 ・学科試験合格証書または学科試験合格通知はがき ・整備技能講習修了証書または一種養成施設卒業証書 ・郵便はがき 2枚 ・3級整備士合格証書(2級を受験した場合) ・2級整備士合格証書(1級を受験した場合) ・実務経験が短縮になる方は、その卒業証書 ・実務経験証明書もしくは検定申請書 ・印鑑 ・申請料
※申請時に必要な書類は、都道府県ごとに異なります。上記はあくまでも一例のため、必ずお住まいの地域にある自動車整備振興会にて確認するようにしましょう。 |
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4.国土交通省から合格証明書が発行
2級自動車整備士は、合格しただけでは資格を取得したことにはなりません。試験合格後2年以内に各都道府県の自動車整備振興会を通じて国土交通省に申請、という制約もあるので注意が必要です。 |
2級自動車整備士の試験内容と難易度
自動車整備士資格のなかでも最も多い受験者数を誇る2級自動車整備士ですが、その難易度はそこまで高くありません。また、合否判定基準は上位○%と決められたものではなく、40点満点中の28点以上(2級シャシは21点以上)獲得し、各分野の正答率が40%以上であるというものです。ライバルの成績は合否に関係してこないので、しっかりと過去問を解くなどの対策を行い、基準以上の点数を獲得すれば合格できます。
2級自動車整備士の試験内容
2級自動車整備士の試験は、学科試験と実技試験の2つに分かれています。また、2級二輪自動車整備士のみ年に1回の実施(各年度の第1回試験のみ)、それ以外の試験は各年度2回のチャンスがあり、同じ年度に複数の試験を受けることが可能です。
それぞれの試験が行われる時期は、以下の通りです。
学科試験 | 実技試験 | ||
【2級ガソリン・ジーゼル・2輪】
筆記試験 |
【2級自動車シャシ】
筆記試験 |
||
試験日 | 10月・3月
※3月はガソリン・ジーゼルのみ |
3月 | 1月・8月 |
受験料 | 7,300円 | – | 14,000円 |
試験時間 | 80分 | 60分 | 30分 |
出題数 | 40問 | 30問 | 3問 |
試験内容 | ・構造、機能及び取扱い法に関する一般知識
・点検、修理、調整及び完成検査の方法 ・整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱い法に関する一般知識 ・材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する一般知識 ・図面に関する初等知識 ・保安基準その他の自動車の整備に関する法規 |
・基本工作
・点検、分解、組立て、調整及び完成検査 ・一般的な修理 ・整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い |
学科試験の対策として、過去問を解くことをおすすめします。自動車整備士の学科試験は科目が決まっており、出題傾向などが定まっているので、繰り返し過去問を解くことは合格をするための有効な手段の一つとなります。
受験者数と合格率
2級自動車整備士の合格率が気になる方のために、ここでは例年の学科試験の合格率をご紹介します。なお、2級自動車シャシ整備士試験に関しては各年度の第2回試験でしか行われていないため、各年度の第2回試験の結果を、それ以外の資格は各年度の第1回試験の結果を記載しています。
受験者数 | 合格者数 | 合格率% | ||
二級ガソリン | 令和4年(第1回) | 2,577人 | 1,549人 | 60.1% |
令和5年(第1回) | 2,433人 | 1,492人 | 61.3% | |
二級ジーゼル | 令和4年(第1回) | 476人 | 283人 | 59.5% |
令和5年(第1回) | 405人 | 230人 | 56.8% | |
二級2輪 | 令和4年(第1回) | 632人 | 462人 | 73.1% |
令和5年(第1回) | 733人 | 572人 | 78.0% | |
二級シャシ | 令和4年(第2回) | 266人 | 196人 | 73.7% |
令和5年(第2回) | 321人 | 276人 | 86.0% |
なお、上記の学科試験のほか実技試験を受験する必要がありますが、実技試験の合格率は例年90~100%で推移しているため、合格へのカギは学科試験の結果にかかっているといえるでしょう。
2級自動車整備士の年収
メカニッ求を運用する株式会社レソリューションが独自で調査したデータによると、整備士全体の平均年収372万(調査対象:845人)に対して2級自動車整備士の平均年収は「376万円」(調査対象:685人)でした。3級よりも責任のあるポジションにつくことが多く、また資格手当を支給している会社もあるため、平均よりも高い傾向にあることが分かります。
※2024年6月30日時点のデータ
2級自動車整備士が活躍できる仕事とは?
2級自動車整備士の資格を取得すると、本来の整備士としてはもちろん、多くの業種で活躍ができるようになります。そこでここでは、整備士を含め、整備士の資格を活かして目指せる業種や職種をいくつかご紹介します。
業種
自動車整備工場
2級自動車整備士を取得すると、民間の自動車整備工場で働くことができます。自動車整備工場は、点検整備や分解整備、緊急整備などの仕事が多く、スピード感と正確性が求められます。とにかく自動車の整備をしたいと希望している場合、おすすめの業種です。
カーディーラー
カーディーラーとは、自動車メーカーが各地に設置している販売店のこと。2級自動車整備士は、自動車メーカー専門の整備士として働くことができます。仕事内容は、お客様が持ってきた自動車の点検や修理などを行います。お客様に整備士から点検や修理の内容を直接説明することもあります。
中古車販売するカーショップ
中古車販売を行っているカーショップの整備士としても働けます。中古車販売専門のカーショップでは、販売する中古車を展示前に点検整備を行ったり、販売中の中古車を点検整備したりします。納車前ももちろん、納車後の整備や修理、定期点検を行うこともあります。
職種
整備職
自動車整備士が活躍できる場として挙げられるのは、やはり整備工場の整備職です。2級自動車整備士であれば、整備や点検に関することは幅広く対応できます。また、チームリーダーやマネージャーといった管理職の立場も目指すことができるでしょう。
自動車エンジニア
自動車エンジニアの仕事は、自動車の設計です。どのような車を作るのか構想し、デザインからコンセプト、部品などを決めて車を1から開発していきます。この自動車エンジニアは、自動車整備士の資格があると有利とされています。自動車を設計からかかわりたい方には、自動車エンジニアの仕事がおすすめです。
おわりに
今回は、2級自動車整備士の仕事内容や資格の取り方、難易度を解説しました。一般的な自動車の整備全般が行える2級自動車整備士は、整備士を目指すのであれば取得しておいた方が良い資格です。取得するためには一定期間以上の実務経験が必要などの受験条件がありますが、本コラムの内容を活用して合格を目指しましょう。