1級自動車整備士資格とは？仕事内容や年収、試験内容について解説

自動車整備の仕事を目指している人、あるいは自動車整備の仕事をしている人であれば、整備士資格の最上位である「1級自動車整備士」に興味をお持ちでしょう。

今回の記事では、この資格を取った場合の仕事内容と活躍の場を詳しく解説し、同時に試験の難易度や資格取得のために必要な準備に関してお伝えします。

仕事と資格取得に関して具体的なイメージを持ち、ぜひ将来の夢の実現に役立ててください。

Zeals友達登録

1級自動車整備士とは

この資格は、国家資格である自動車整備士資格の最上位となります。

一般的に、2級自動車整備士の資格があれば分解・整備・修理を含む整備業務全般の自動車整備の仕事が可能なため、有資格者の多くは2級自動車整備士で、1級資格を取得している人はそう多くありません。ただし1級を取得すれば、この仕事をさらにレベルを上げて行えるようになります。

また整備現場においては、知識と技術を活かし、他の整備士・工員を指導する立場も期待されるでしょう。顧客対応において、安全管理や環境保全などの面で整備視点からのアドバイザー的な対応を求める職場もあります。そのため、動力の多様化・安全技術の進歩などの最新情報を把握・理解していることが必要です。

今後は、電気自動車や自動運転の技術が身近になっていくことが予想されるため、そういった新しい技術に対応できるスキルが求められることを踏まえると、1級自動車整備士のニーズは高まっていくことが考えられます。

1級自動車整備士の種類

1級自動車整備士には、「1級大型自動車整備士」「1級小型自動車整備士」「1級二輪自動車整備士」の3種がありますが、現在までに試験が実施されているのは1級小型自動車整備士のみとなります。そのため、1級自動車整備士は1級小型自動車整備士を指すのが一般的です。

2級資格との違い

2級自動車整備士は資格ごとに次のように整備範囲が限定されますが、基本的には自動車整備全般に携わることが可能で、単独での整備分解作業もできます。

これに対して、1級自動車整備士資格は1種類のみです。オールマイティーな整備士として整備仕事をすべて単独で担当できます。また、環境問題や技術革新に関する知識や提案力が求められるのは、1級自動車整備士の試験のみです。

1級自動車整備士を取るメリットは？デメリットや2級との違いも解説 - 自動車整備士の転職・求人情報ならメカニッ求 コラム

近年、最新技術の進歩によってさまざまな次世代自動車が誕生しています。自動車整備業界でも変化に対応するための対策

mechani-q.com

2級自動車整備士とは？資格の取り方・合格率・仕事内容を解説 - 自動車整備士の転職・求人情報ならメカニッ求 コラム

車好きやメカニック好きで、自動車整備士を目指している方は少なくないでしょう。しかし「整備士＝車を点検・整備する仕事」という漠然としたイメージはあっても、実際の仕事内容や2級自動車整備士と1級自動車整備士の違い、資格の取り方や難易度などを知らないという方も多いのではないでしょうか。 そこで本記事では、整備士のなかでも2級...

mechani-q.com

1級自動車整備士を取得するメリット

1級自動車整備士資格は取得が難しいものです。取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1級自動車整備士資格を取得するメリットは、以下の3点が挙げられます。

将来的な需要増加が見込める

1級自動車整備士は、ガソリン車、ディーゼル車、整備箇所に関わらず、有資格者として整備業務を行うことが可能です。また、近年話題のハイブリッドや電気自動車、水素自動車など特殊な自動車の整備もできるようになります。将来的に、このような自動車は増えていくことが考えられ、どのような車でも整備できる1級自動車整備士の需要は伸びていくことが見込めます。

就職や転職に有利になる

自動車整備士資格の中でも最上位の資格のため、持っていることで自分の技術を可視化することができ、就職や転職に有利になるでしょう。また、対応可能な車の種類も多く、知識と技術面で高いレベルが期待できるため、就職・転職先の選択肢が広がります。

給与アップの可能性がある

1級自動車整備士を取得することで、資格手当が支給されることがあります。特に1級自動車整備士は、整備士の中でも一番上の資格となることから、2級・3級と比較して多くの手当が支給される可能性があります。就職先や条件によって異なるため、一概には言えませんが、資格手当が支給されることで、給与アップにつながります。

1級自動車整備士資格の受験条件と取得までの流れ

1級自動車整備士の資格を取るための受験条件と資格取得までの流れ、試験内容を解説します。

受験条件

1級自動車整備士の試験を受けるためには、2級自動車整備士の資格取得後（2級自動車シャシ整備士は除く）、整備士としての実務経験が3年以上あることが必要です。

ただし、自動車整備系の大学・専門学校などの1級整備士養成課程卒業であれば、卒業と同時に受験資格が発生し実技試験は免除されます。

独学で資格取得を目指す場合と専門学校に通った場合では、専門学校に通った方が短期間で受験が可能だったり、実技試験を免除できたりします。

以下では、自動車整備士の養成を目的とした一種養成施設に通った場合と二種養成施設に通った場合について説明します。

整備士系の学校に通う場合

整備士養成が目的の自動車大学校や専門学校では、2級整備士養成課程と1級整備士養成課程があります。2級整備士養成課程は、2年制で、卒業後に2級自動車整備士を受験します。1級自動車整備士を取得する場合は、3年間の実務経験を得てから、受験する流れになります。1級整備士養成課程は4年制で、在学中に2級自動車整備士を受験します。卒業後、1級自動車整備士の受験資格を得ることができます。1級整備士養成課程に通っている場合は、実技試験が免除されます。

整備士系の学校に通わない場合

整備士系の学校に通わない場合は、3級自動車整備士・2級自動車整備士を取得した上で、実務経験を積む必要があります。整備士系の学校に通わずに1級自動車整備士を目指す場合は、まずは3級自動車整備士・2級自動車整備士の取得を目指します。

資格取得までの流れ

1級自動車整備士の資格を取るためには、日本自動車整備振興会が実施する「自動車整備技能登録試験（登録試験）」を受験するのが一般的です。

登録試験に合格後、2年以内に「自動車整備士技能検定試験（検定試験）」の免除申請（全免申請）を行えば1級自動車整備士の資格を取得することができます。

なお、全免申請に必要な書類は卒業した学校によって異なるため、詳しくは都道府県の自動車整備振興会に問い合わせてください。

また、一種養成施設の1級自動車整備士課程修了者と各都道府県の自動車整備振興会の対象技術講習修了者は、実技試験が免除されます。

↓

↓

↓

自動車整備技能登録試験を受験し、合格したら2年以内に自動車整備振興会で国土交通省に申請します。2カ月程度で合格証明書が発行され、資格取得となります。

1級自動車整備士の試験内容と難易度

ここからは、1級自動車整備士の合格率と難易度についてご紹介します。

受験者数と合格率

【1級小型自動車整備士の筆記試験の受験者数と合格率】

参考：日本自動車整備振興会連合会「試験結果（受験者及び合格者数等）」

日本自動車整備振興会連合会が公開している登録試験結果によると、1級小型自動車整備士の合格率は筆記試験が50％台となっています。2・3級の合格率は90％台なので、1級合格のハードルは高めです。

筆記試験後の口述試験の合格率は95％以上で、筆記試験に通ったら学科試験はほぼ合格できるようです。学科試験合格後の実技試験の合格率は開催年によってばらつきがあり、合格率が高い年もあれば、低い年もあります。

1級自動車整備士の試験内容

学科試験内容は、構造・機能及び取扱法や、点検・修理・調整及び完成検査の方法などです。試験は、総合的であり、かつ最新の環境問題も考慮した内容となります。

実技試験は、8月に全4問40分で実施されます。

試験内容は、基本工作、点検・分解・組み立て・調整及び完成検査、修理、整備用の試験機・計量器・工具の取扱いなど、整備士の実技チェックとして一般的な内容です。

なお、国土交通省は2022年5月25日に、自動車整備士技能検定規則の一部を改正し、2027年1月1日からは新しい試験制度が導入されます。

1級自動車整備士の年収

メカニッ求を運用する株式会社レソリューションが独自で調査したデータによると、整備士全体の平均年収372万（調査対象：845人）に対して1級自動車整備士の平均年収は「387万円」（調査対象：12人）でした。1級整備士を持っていることで、資格手当により給与面は上であることが分かります。ただ、資格保持者は若い方が多いこともあり、2級と比較すると給与に大きく差があるというわけではなさそうです。

※2024年6月30日時点のデータ

1級自動車整備士が活躍できる仕事とは？

業種

自動車整備工場

1級自動車整備士であれば、高度な技術の分解整備ができるため、自動車整備工場で活躍できます。また、自動車整備工場はさまざまな自動車の整備・点検ができることから、いろんな車の整備・点検したいと考えている方におすすめの場所です。

国産車・輸入車のディーラー

1級自動車整備士は、ディーラーの整備部門でも、働くことができます。好きな車種があれば、そのディーラーで働くことを目標にするのも良いでしょう。

自動車メーカーの車両開発

整備だけではなく、自動車メーカーの車両開発に関する部署への就職する手段もあります。自動車開発設計などに携わるとなると、自動車整備士の資格を保持していると有利になる可能性があります。特に1級自動車整備士は、もっとも難易度が高く一番上の資格のため、有利になるでしょう。

職種

整備職

自動車整備士が活躍できる場として、もっとも多いのが「整備職」です。1級を持っていれば整備全般を担当できる上に、職場の管理、後輩の指導・育成も期待されます。さまざまな動力や最新安全技術に関する知識も重宝されるでしょう。

自動車ディーラーのサービス整備部門であれば、整備のリーダー的存在として活躍できます。さらに、顧客に対して、動力の多様化や環境問題への対応、最新安全技術などの情報提供を含めた、コンサルタント的な役割も期待されます。

自動車エンジニア

メーカーならエンジニアとして実力が発揮できますし、カスタムショップなどは接客要素が強く求められるので、人と接するのが好きでコミュニケーション能力に自信のある人にぴったりです。タクシー会社・バス会社・運送会社など多くの車両を扱う企業でも、保守点検スタッフとして高いニーズがあります。

また、2020年4月からは、衝突被害軽減ブレーキといった先進安全技術の整備を行うには「特定整備」の認証を受けなければいけなくなりました。 特定整備の認証を受けるためには、2名以上の従業員が必要、かつ1級自動車整備士が1人以上いなければいけないため、特定認証整備を整備工場でも重宝されます。

おわりに

自動車整備士資格の最上位である1級自動車整備士の仕事内容や活躍できる場所、試験の難易度、取得方法を紹介しました。

まだまだ取得者の少ない資格ですが、近年話題のハイブリッドや電気自動車などの次世代車の普及、動力の多様化や安全装置の進化に伴い、今後も大きな期待が寄せられる資格です。ぜひ前向きに取得を検討してみてはいかがでしょうか。

メカニッ求の会員登録をする

求人情報を探す