自動車整備士は、日々のメンテナンスから故障修理まで、車の安全と性能を守る重要な仕事です。これから自動車整備士を目指す方や、すでに自動車整備士として働く方は、どのようなキャリアを目指せるのか気になるのではないでしょうか。
この記事では、自動車整備士としてのキャリアアップのメリットや、未経験からでも目指せるキャリアパスについて詳しくご紹介します。
自動車整備士がキャリアアップするメリットは?
自動車整備士としてキャリアアップを目指すことで、さまざまなメリットがあります。
まずは、年収アップが期待できる点が挙げられます。例えば、工場長やチーフメカニックなどの役職に就くと、基本給に加えて役職手当が支給されるケースも多く、収入面での安定が図れます。
さらに、資格の取得や経験を積むことで対応できる作業の幅が広がり、より高度な整備や診断業務にも携われるようになります。これにより、ディーラーや整備工場だけでなく、自動車メーカーや車検専門企業など活躍の場も広がります。
他にも、自動車整備士としてキャリアアップすることで、自分の可能性を広げる大きなチャンスにも恵まれるでしょう。
無資格・未経験者のキャリアパス
自動車整備士は、資格がなくても働くことが可能です。しかし、できる業務が限られているため、キャリアアップが困難になることもあります。
もし、無資格・未経験で働いている場合は自動車整備士の資格取得を目指し、キャリアパスにつなげましょう。
3級自動車整備士
3級自動車整備士は、点検や簡易的な整備作業を担当できます。車種によってはエンジンや電気装置など、特定分野の基本的な整備を行うことも可能です。
3級自動車整備士は、主に4つの資格があります。
3級自動車整備士資格の種類 |
3級自動車ガソリン・エンジン整備士 |
3級自動車ジーゼル・エンジン整備士 |
3級自動車シャシ整備士 |
3級二輪自動車整備士 |
受験資格は、自動車科の高等学校に通っていた場合は、卒業後にすぐに受験することが可能です。機械科の場合は6カ月の実務経験、その他自動車とは全く関係のない学校に通っていた場合は1年間の実務経験を積むことで受験資格を得られます。
実務経験を積めば誰でも受けられることから、初めて整備士を目指す方にとって、最初のステップとして最適な資格です。
2級自動車整備士
2級自動車整備士を取得していると、ほとんどの整備作業を単独で行えるようになります。ブレーキやエンジンなどの重要保安部品の整備も可能になり、現場での中心的な存在として活躍できます。3級自動車整備士を持っている場合は、2級自動車整備士の取得を目指すことで、活躍の場が広がるでしょう。
2級自動車整備士には、3つの種類があります。
2級自動車整備士資格の種類 |
2級ガソリン自動車整備士 |
2級ジーゼル自動車整備士 |
2級自動車シャシ整備士 |
受験資格は、自動車整備士養成施設を卒業した場合は、卒業後すぐに受験が可能です。その他の場合、3級自動車整備士の資格取得後、2年間の実務経験を経ることで受験資格を得られます。
1級自動車整備士
1級自動車整備士は、電子制御装置を含む高度な整備技術や、診断技術を習得していることが求められます。そのため、もっともレベルの高い資格で、取得するのも難関な資格ともされています。1級自動車整備士の数は少ないですが、さらに活躍の場を広げたい方は取得への挑戦をしてみると良いでしょう。
1級自動車整備士を取得することで、ハイブリッド車や先進安全技術への対応など、最先端の自動車技術に携わることが可能になります。
1級自動車整備士は3つの種類があるとされています。
1級自動車整備士資格の種類 |
1級小型自動車整備士 |
1級大型自動車整備士 |
1級二輪自動車整備士 |
ただし、1級大型自動車整備士、1級二輪自動車整備士の試験は実施されたことがありません。1級自動車整備士を目指すなら、「1級小型自動車整備士」を取得するのが一般的です。
1級自動車整備士の資格を取得するには、自動車整備士専門学校に通うか、実務経験を積むかの2択になります。4年生の自動車整備士専門学校に通っている場合は、2級自動車整備士を取得後、卒業と同時に受験資格を得られます。
その他の場合は、2級自動車整備士資格を取得後、2年間の実務経験を積んだ上で、受験資格を得ることができます。無事に試験に合格すれば、1級自動車整備士として働くことができます。
自動車整備士のキャリアパス
すでに2級または1級の自動車整備士資格を取得し、現場での実務経験を積んでいる方は、さらなるキャリアアップを目指すことが可能です。経験を活かして、より専門性の高いポジションや、管理職としての道を進むことができます。
ここでは、自動車整備士の代表的なキャリアパスをご紹介します。
自動車整備主任者を目指す
2級自動車整備士または1級自動車整備士の資格を持っている方が目指せる次のステップが「自動車整備主任者」です。
自動車整備主任者は、整備工場で行われる分解整備が国の基準を満たしているかどうかをチェックする役割があります。
自動車整備工場が国から認証工場や指定工場に指定されるためには、必ず「自動車整備主任者」を1名以上配置することが決められています。自動車整備主任者になるには、1級・2級の自動車整備士資格の他に、自動車整備主任者研修を受ける必要があります。
自動車整備主任者は、法令に基づいた点検・整備が適切に行われるよう指導する立場となるため、高い専門知識とリーダーシップが求められます。仕事の幅が広がり、待遇面でも優遇に期待できるでしょう。
自動車検査員を目指す
自動車整備主任者として一定の実務経験を積んだ後には、「自動車検査員」の資格取得を目指すことも可能です。自動車検査員は、車検に必要な最終検査を担当する立場であり、整備士の中でも特に責任の重い役割となります。正確な判断力と法令知識が不可欠で、工場にとっても欠かせない存在です。
自動車検査員は、自動車検査員教習を受け、修了試験に合格することでなれます。ただし、教習を受けるには、整備主任者として1年以上の実務経験を積み、整備主任者研修を受講していなければなりません。
工場長や副工場長を目指す
現場での豊富な経験を積んだ後は、工場長や副工場長としてマネジメントも行うことでキャリアアップにつながることがあります。
現在勤めている整備工場で副工場長や工場長へ昇進を目指すか、あるいは他社の工場長ポジションへの転職を検討することもできます。スタッフの指導や工場全体の運営管理を担う立場となり、整備士としての技術力に加え、経営視点やマネジメントスキルも重要になります。
工場以外の自動車整備士のキャリアパス
自動車整備士としてのキャリアは、必ずしも整備工場にとどまるものではありません。工場勤務以外にも、自動車整備のスキルを活かして活躍できる場所があります。ここでは、工場以外で目指せる代表的なキャリアパスについてご紹介します。
公務員の整備士を目指す
自動車整備士の資格と経験を活かし、公務員として働く道もあります。例えば、地方自治体や国の機関で公用車や緊急車両の整備を担当するポジションがあり、安定した勤務条件と福利厚生が魅力です。自動車整備士の資格とは別に、公務員試験に合格する必要はありますが、長期的に安定した環境で働きたい方にとっては非常に魅力的な選択肢です。
ディーラー独自の整備士資格を取る
自動車メーカー系ディーラーでは、それぞれ独自の整備士資格制度を設けている場合があります。メーカーの最新技術や特定車種に特化した知識を身につけられるため、スキルアップにも直結します。高い専門性を持った技術者として評価されやすく、ディーラー内での昇進や給与アップにもつながるでしょう。
バス整備士やタクシー整備士
バス会社やタクシー会社の整備工場で、整備士として働くこともできます。大型車両ならではの知識や技術が求められるため、整備士として新たな専門領域を開拓することができるでしょう。運行管理や安全管理といった業務にも関わる機会があり、より責任ある仕事を任されることもあるかもしれません。責任感のある仕事であることから、キャリアパスを目指すことができます。
おわりに
今回は、自動車整備士のキャリアアップについて解説しました。
自動車整備士としてキャリアアップしたい場合、まずは実務経験を積むことが大切です。資格を持っていない場合は取得を目指すことでキャリアアップにつながります。すでに資格を持っている場合は、「自動車整備主任者」や「自動車検査員」などの責任あるポジションを目指すようにしましょう。
十分な経験があるのに、現在の職場の都合でこれ以上のキャリアアップが難しいなどの場合は、転職でなりたいポジションを目指すこともおすすめです。