「乙種第4類危険物取扱者」通称「危険物乙4」は、人材需要が高く仕事に結びつきやすいうえに、比較的取得しやすい人気の資格です。
今回は、危険物乙4の試験概要から合格率・難易度、取得にかかる勉強時間やおすすめの勉強法まで解説します。危険物乙4について効率良く勉強したい人は、ぜひご一読ください。
危険物乙4とは
危険物取扱者資格は、消防法で指定された「危険物」を取り扱う際に必要な資格で、試験は毎年各都道府県でおこなわれています。資格は甲・乙・丙の3種に分かれ、乙・丙は受験資格が不要で誰でも受験可能です。
甲種 | すべての種類の危険物 |
乙種 | 第1類 酸化性固体 第2類 可燃性固体 第3類 自然発火性物質及び禁水性物質 第4類 引火性液体 第5類 自己反応性物質 第6類 酸化性液体 |
丙種 | 引火性液体 |
乙種資格は第1類から第6類まであり、その中で危険物乙4(正式には「危険物取扱者乙種4類」)の対象となる危険物は次の引火性液体です。
品名 | 該当する物品例 |
特殊引火物 | ジエチルエーテル 二硫化炭素 アセトアルデヒド 酸化プロピレン |
第一石油類 | ガソリン ベンゼン トルエン メチルエチルケトン 酢酸エチル アセトン ピリジン |
アルコール類 | メチルアルコール エチルアルコール n-プロピルアルコール イソプロピルアルコール |
第二石油類 | 灯油 軽油 キシレン クロロベンゼン n-ブチルアルコール 酢酸 プロピオン酸 アクリル酸 |
第三石油類 | 重油 クレオソート油 アニリン ニトロベンゼン エチレングリコール グリセリン |
第四石油類 | ギヤー油 シリンダー油 タービン油 可塑剤 |
動植物油類 | ヤシ油 パーム油 オリーブ油 ヒマシ油 落花生油 ナタネ油 米ぬか油 ゴマ油 綿実油 トウモロコシ油 ニシン油 大豆油 ヒマワリ油 キシ油 イワシ油 アマニ油 エノ油 |
ガソリンや軽油・灯油・重油をメインに生活や産業に欠かせない物品も含まれており、ガソリンスタンドや自動車整備工場はもちろん、タンクローリーのドライバーや公共施設の設備管理の際にこの資格を活かすことができます。
危険物乙4資格は国家資格ですが、身近な石油類の取り扱いに関する試験なので勉強しやすいうえに、人材ニーズが高い資格です。国家資格としては比較的取得しやすいこともあり、資格として高い人気を誇ります。
甲種との違い
先で記載したように、甲種は危険物取扱者の中でも最上位資格で、第一類から第六類まですべての危険物を取り扱える資格です。また乙種4類と同様、無資格者の立ち会い業務が許可されており、実務経験を積むことで危険物保安監督者に選任される資格を持てます。
丙種との違い
丙種は第4類のうち、ガソリンや灯油など特定の危険物のみ取り扱いできる資格です。乙種4類よりも下位資格で取り扱い範囲が限られているので、丙種資格でできることは乙種資格でもできます。また、乙種4類では無資格者の立ち会い業務ができますが、丙種では無資格者の立ち会い業務は許可されていません。
危険物乙4を取得するメリット
ここからは、危険物乙4を取得するメリットをご紹介します。
資格手当てがもらえる可能性がある
就職先によっては、危険物取扱者の資格を取得すると収入アップが期待できます。支給額の相場は数千円と高額ではありませんが、資格手当がつく企業であれば毎月の収入額を増やすことができます。
就職や転職で有利になる
自動車業界にかぎらず、化学工場やビルメンテナンス、危険物移送のドライバーなど引火性液体を扱う業種や職種はたくさんあります。多くの場合、応募資格に「危険物取扱者」と記載されており、資格を取得することで採用が有利になるでしょう。就職・転職の選択肢が広がり仕事が見つけやすいことは大きなメリットです。
需要が高く、さまざまな場所で役に立つ
上記のとおり、引火性液体などの危険物を扱う企業は多数あり、実用性もある危険物取扱者の需要は非常に高いです。危険物乙4の資格があれば、自動車業界だけでなく取り扱い可能な危険物を使用する幅広い現場で即戦力となります。実務経験を積んで危険物保安監督者になればさらに活躍の場が増えるでしょう。
危険物乙4の試験概要
危険物乙4の試験の概要をご紹介しておきます。
危険物乙4の受験資格
危険物乙4に受験資格はありません。性別や学歴、年齢の制限もないため誰でも受験することができます。
試験概要
危険物乙4の試験概要は次のとおりです。試験日と試験会場は、消防試験研究センターの中央試験センター(東京)及び各道府県支部で実施しており、全国どこの試験会場でも受験可能です。
試験日 | 公式サイト(一般財団法人 消防試験研究センター)で確認する |
試験会場 | 公式サイト(一般財団法人 消防試験研究センター)で確認する |
出題形式 | マークシート(五肢択一式) |
試験時間 | 2時間 |
出題範囲 | ・危険物に関する法令:15問 ・基礎的な物理学及び基礎的な化学:10問 ・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法:10問 |
受験料 | 試験手数料(乙種):4,600円 |
危険物乙4の合格基準
公式サイトによると、危険物乙4の試験を合格するには3科目すべて60%以上の正解が必要です。苦手な分野を他の科目でカバーするということができず、一つでも60%未満がある場合は、ほかの科目の成績がどんなに良くても不合格となってしまいます。3科目すべてしっかり勉強して対策することが大事です。
試験結果は、合格発表予定日に各都道府県の支部別の掲示板等に合格者の受験番号が公示され、受験者には郵便ハガキによる通知か、もしくは公式サイトで合否結果を確認できます。
危険物乙4の合格率・難易度
一般社団法人消防試験研究センターのホームページに掲載されている危険物乙4の例年の合格率は次のとおりです。
年度 | 合格率 |
平成28年度 | 28.9% |
平成29年度 | 34.4% |
平成30年度 | 39.0% |
平成31年度/令和1年度 | 38.6% |
令和2年度 | 38.6% |
令和3年度 | 36.1% |
危険物乙4は、例年20万人以上の試験受験者のうち合格するのは7~8万人、合格率は30%前後です。そのほかの乙種試験は、合格率が60~70%程度となっていることから乙種の中でも乙4の合格率はかなり低く、難易度が高いように思われます。
その理由の一つとして合格基準が試験科目ごとにそれぞれ60%以上である点が挙げられます。科目の1つが60%未満の場合は、ほかの科目が良くても不合格となるようです。危険物乙4は仕事をしながら受験をする人が多く、十分な学習ができていないまま試験を受ける人も多いため、合格率が低くなっていると考えられるでしょう。
危険物乙4に合格するための勉強時間・勉強方法とは?
ここからは、危険物乙4に合格するために必要な勉強時間や、おすすめの勉強方法をご紹介します。
勉強時間
危険物乙4に合格するための勉強時間は100時間、期間にすると3ヶ月程度必要だといわれています。しかし、仕事をしながら勉強しているとまとまった時間を確保しにくく、十分な勉強時間がとれないという方も多いでしょう。そのような場合は、勉強方法を工夫して効率良く勉強することが重要です。効率的に勉強すれば、1ヵ月半程度で合格できるレベルまで近づくでしょう。
おすすめの勉強方法
危険物乙4の試験は、過去問の類似問題から出題される傾向にあるので、過去問を解いて出題傾向をチェックすることが合格への近道です。ただし、単に過去問を解くのではなく、「問われているのは何で、どこを覚えれば類似問題でも解答できるのか」を意識して取り組みましょう。以下で過去問の代表的な入手方法をご紹介します。
過去問アプリを使う
過去問を参考に作成されたオリジナル問題全280問に、暗記カード全200問が収録されているアプリです。スマートフォンさえあれば、いつでも試験問題と取り組めるのが魅力。カラー付箋や自分専用の暗記カードを使うこともできます。間違った問題だけを選んで解答できるので、効率良く弱点の克服ができるでしょう。
一般財団法人 消防試験研究センターの公式サイトで確認する
資格所有者が習得すべき知識・技能の目安になるよう、公式サイトが過去問の一部を公開しています。ただし、解説がなく問題数が35問と少ないのが難点です。公式の過去問なのでしっかりおさえておくのがおすすめですが、ここだけに頼らず、ほかの方法と組み合わせて利用したほうが良いでしょう。
おわりに
危険物乙4資格は、人材ニーズが高いにも関わらず比較的取得しやすい国家資格です。合格率の低さも準備不足が要因になっている節もあるため、しっかりと勉強して対策すれば取得はそうむずかしくないようです。ガソリン・軽油・灯油などの引火性液体を扱う仕事に関心のある人は、スキルアップの一環として資格取得を目指してはいかがでしょうか。
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