板金塗装は、自動車のボディの修理・修復に特化した仕事です。自動車は事故による損傷だけでなく、年月の経過とともに塗装が剥がれたり劣化したりするものです。このように、傷ついたりへこんだりした自動車を修理して塗装することで、元通りのきれいな状態に修復します。
本記事では、板金塗装とは具体的にどのような作業を行うのか、仕事をする上で取得しておきたいおすすめの資格をご紹介します。
板金塗装とは?
板金塗装は、「板金」と「塗装」の2つの工程に分かれており、傷ついたりへこんだりした自動車を修理する作業のことを指します。
板金作業は、事故などによって損傷を受けた自動車の変形した部分を、元の形状に戻す作業を行います。その他、ボディのパーツ交換やゆがんだフレームの修正、パネル交換、塗装作業のための脱着も板金作業に含まれます。
塗装作業は、板金作業で剥がしたり削ったりした部分に塗料を塗って元の状態にする作業を行います。元の色に近づけるよう調色しますが、熟練の職人でも100%同じ色にするのは難しいといわれる作業です。また、単に塗装するだけでなく、パテで下地を整えたり、でこぼこやゴミを除いたりするなど、複数の工程を合わせて塗装と呼ばれます。
自動車整備士との違い
自動車整備士は、自動車の修理や点検・メンテナンスを行います。壊れた自動車のパーツを分解し、故障の原因を見つけて修理したり、車検や定期点検で不具合がないかをチェックしたりします。板金塗装は自動車のボディにできた傷やへこみ、劣化などの修理・修復作業を行います。
どちらも自動車の悪い部分を元の良い状態に戻す作業であることは共通ですが、自動車整備士は自動車の内部についての修理を行うのに対して、板金塗装業は自動車の外装の修理を行うという点で異なります。
板金塗装の流れ
板金塗装は自動車にひっかき傷や擦り傷、へこみができた時、色あせができた時などに必要になります。板金塗装の作業の大まかな流れは4つのステップに分けられます。
1. ボディのへこみを表面に引き出す
まず、自動車の傷の大きさや深さを確認し、ボディがへこんでいる箇所を表面に引き出す作業を行います。ハンマーなどの専用工具で裏から叩いたり、表面から引っ張ったりすることで自動車のボディのへこみを引き出します。
2. 塗装面を剥がしてパテを埋め込む
へこみの引き出し作業が終わったら、塗装面を剥がしてパテを埋め込みます。パテが乾燥したら研磨紙などで研磨して表面をなめらかにします。
3. 下地中塗り上塗りをする
パテを埋め込んだ部分に下地塗料を塗り、乾燥するまで待ちます。乾燥後、元の自動車の色と同じになるように確認しながら塗料を調色し、ボディに塗装していきます。塗装していることが分からないよう色を合わせてきれいに仕上げることが重要です。
4. 塗装が乾いたら、コンパウンドで磨きあげる
塗装が乾燥したら、ボディの表面に付いた傷を消すためにコンパウンドで仕上げ磨きを行います。
板金塗装の仕事をするのに資格は必要?
板金塗装の仕事をするのに取得しなければならない資格はありません。
ただし、板金塗装は高度な技術力と専門的な知識を求められる仕事です。単に自動車の見た目を元通りにするだけでなく、自動車の強度を考慮しながら作業を進めなければなりません。板金塗装の仕上がりは職人の経験と技術力で決まるため、実務経験を積んで技術を習得する必要があります。
板金塗装において必須の資格はありませんが、自動車業界で働く上で自動車に関するさまざまな知識を持っておくと、就職に有利となったり仕事の幅が広がったりします。板金塗装業を目指している方は関連する資格についてチェックしておくと良いでしょう。
板金塗装の仕事におすすめの資格7選
板金塗装の仕事におすすめの資格は以下の7つです。各資格の概要や板金塗装業への活かし方をご紹介します。
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- 自動車整備士資格
- 自動車車体整備士資格
- 塗装技能士資格
- 危険物取扱者(乙種第4種)
- ガス溶接技能士・アーク溶接技能士資格
- 有機溶剤作業主任者資格
- カラーコーディネーター
自動車整備士資格
自動車整備士は、自動車の点検・修理、メンテナンス、分解などの作業を行うことができる国家資格です。自動車整備士資格には1級・2級・3級と特殊整備士があり、特に板金塗装に役立つのは分解整備を行える2級自動車整備士以上の資格です。場合によっては板金塗装の際に分解整備を行うこともあるため、資格を取得しておくのがおすすめです。
自動車車体整備士資格
自動車車体整備士は特殊整備士の一つで、自動車のフレームやボディ部分など車体に関する知識や技能を証明する国家資格です。車体の整備・修理・点検を行うことができ、板金塗装を行う上で特に役立つ資格とされます。就職に有利となる可能性が高いため、板金塗装業を目指す人にとって取得するメリットは大きい資格でしょう。
塗装技能士資格
塗装技能士資格は、塗装に関する知識や技能を有することを認定する国家資格です。金属、木工、建築、噴霧、鋼橋の5種類に分かれており、その中で自動車の板金塗装で役立つのは「金属塗装技能士」です。自身の塗装技術の向上とともに、スキルを証明することでお客様からの安心感を得ることができるでしょう。
危険物取扱者(乙種第4種)
危険物取扱者は、消防法において6つに分類された危険物を取り扱う際に必要な資格です。危険物取扱者には丙種・乙種・甲種と3つの種類があり、その中でも乙種第4種はガソリンや軽油、重油、灯油などの危険物を取り扱えます。自動車業界で働く上で資格を取得しておくと、幅広い業務に活かせるでしょう。
ガス溶接技能士・アーク溶接技能士資格
板金業務では、金属の溶接・溶断・加熱の作業を行うことが多くありますが、これらの作業は溶接技能士の資格がないとできない作業となっています。板金業務を行う上で、ガス溶接技能士・アーク溶接技能士資格は有用性の高い資格です。
有機溶剤作業主任者資格
有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を取り扱う時に現場の指揮・監督を行う責任者です。有機溶剤は他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物なので、取り扱いには注意しなければなりません。自動車の塗料にも有機溶剤が用いられているため、安全に作業を行うために必要な存在となります。
カラーコーディネーター
塗装作業では、自動車のボディに合わせて塗料を調色します。不自然にならないよう、微妙な色の違いを見極めなければなりません。カラーコーディネーターは色彩の知識が身に付くため、塗装作業で役立つ可能性があります。
板金塗装に向いている人は?
板金塗装には、以下のような人が向いています。
向上心がある人
板金塗装の技術を習得し、一人前として作業できるようになるのに10年かかるといわれています。そのため、根気強く、日々コツコツと技術力や知識力を磨いていく向上心がある人に向いています。
手先が器用な人
板金塗装では小さな部品を取り扱います。また、細かな作業を行うことが多いため、手先が器用な人に向いています。
集中力がある人
板金塗装は細かな作業を行ったり、毎日同じ作業を繰り返したりすることが多い仕事です。長時間の作業となるため集中力を必要とし、黙々と作業に取り組める人に向いています。
まとめ
今回は、板金塗装の作業内容や資格について解説しました。未経験・無資格でも板金塗装の仕事に就くことは可能です。しかし、資格を取得しておくと、より深い知識と技術を学べて、今後のキャリアにおいてもプラスの要素となります。
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