リコールとは?制度の目的やリコールの流れ・対処法を解説

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自動車関連の話題やニュースで耳にする機会のある言葉に「リコール」があります。報道される際の見出しには「○○(車種名)が△万台リコール」のように書かれることが多く、リコールそのものの意味についてはあまり説明されることがありません。

この記事では、自動車のリコールについてその言葉の意味と概要、リコール事案が発生した際の対処法や対応の流れをご紹介します。

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リコールとは?

リコールとは、すでに生産・販売された自動車の設計や製造の過程に問題点が見つかった場合、メーカーの自主判断によって回収や該当箇所の修理を実施し、不具合やそれにともなう事故などの発生を防ぐ制度を指しています。
メーカーはリコールを決定した時、あらかじめ国土交通省大臣に届け出を行い、国交省およびメーカーが発表する情報によってユーザーに対応が必要な旨を通知します。

リコールの概要

メーカーから特定の車種に関するリコールの届け出があった際、国土交通省が受け持つ役割は以下の通りです。

  • 不具合情報を収集し分析を実施
  • リコールに対するメーカー側の取り組みについて調査
  • 取り組みの内容が適切でない場合は指導や監査を実施
  • 届け出の内容が適切でない場合は改善指示を実施
  • 事故や不具合が頻発していながらメーカーの自主判断によるリコールが実施されない場合の勧告および命令

参照:国土交通省

近年のリコールの届け出件数

国土交通省自動車局 審査・リコール課の公表資料による、平成27年度~令和元年度の5年間における国産車および輸入車の届け出件数・台数は以下の通りです。

  • 平成27年度:届け出件数の合計368件、対象台数18,990,637台
  • 平成28年度:届け出件数の合計364件、対象台数15,846,080台
  • 平成29年度:届け出件数の合計377件、対象台数7,709,595台
  • 平成30年度:届け出件数の合計408件、対象台数8,217,340台
  • 令和元年度:届け出件数の合計415件、対象台数10,534,492台

リコール対象台数は、届け出をされた車種によって生産・販売台数も異なるため年度ごとに変動します。このため、リコールの増減の目安となるのは届け出件数と考えてよいでしょう。過去5年間をみると、平成27年度と令和元年度では47件の開きがあり、届け出件数が年々増加する傾向にあることが分かります。
参照:国土交通省

リコールの対象となる事例

自動車メーカーが自主判断によって回収や無償修理を行う措置にはリコールのほか、改善対策、サービスキャンペーンの3つがあります。リコールは、これら3つのうちもっとも安全面に影響を及ぼすレベルが高い(構造、装置、性能のいずれかが道路運送車両の保安基準を満たしていないか、満たさなくなる可能性が高い)と判断される場合に対象となります。

なお、改善対策は保安基準不適合にはあたらないものの、安全上もしくは公害防止上放置できないか放置できなくなると予測される場合に措置が取られます。またサービスキャンペーンは、リコールまたは改善対策の対象に該当しない問題点に対し、品質改善などを目的にメーカーが無償修理対応を実施するものです。

リコールの流れ(リコールが起きた時の対処法)

リコールはメーカーが判断し、国土交通大臣に届け出ることで実施されます。ここでは、リコールの発生からユーザーへの通知、修理対応へ至るまでの詳細な流れについてご紹介します。

メーカーの動き

自動車メーカーには品質管理部門があり、そこで生産・販売した自動車の品質に関する問題点や不具合の可能性について常に調査と分析を行っています。
品質管理部門にユーザーからの苦情や不具合報告などが届けられますが、同様の事例が多いものについては再現テストや詳細調査を実施します。不具合やクレーム内容を調査し、その重大性や発生頻度、保安基準との兼ね合いなどを総合的に考慮した上で必要と判断された場合、リコール対応を決定します。メーカーは国土交通大臣へリコール届を出し、回収や修理対応の準備と必要な部品の手配を行います。

ユーザーの対応

リコール対象車を所有または使用しているユーザーへ、販売店またはメーカーからリコール措置に関する連絡が行われます。ユーザーは車を購入した販売店や最寄りのメーカー系販売店などへその旨を伝え、リコール対応(車を預け、無償修理を行ってもらう)を実施してもらいます。民間整備工場ではリコールにともなう修理は実施できませんが、メーカー系販売店に修理対応を取り次いでもらえる場合もあります。

リコールの注意点

もしご自身の車がリコール対象となり、メーカーから連絡があった場合には早期に販売店などへ対応に関する相談をし、修理を実施してもらう必要があります。ここでは、リコール措置を受ける際にユーザー側で注意したい点をご紹介します。

リコール対象車は車検に通らない?

車検は、車が国交省の保安基準に適合しているかどうかを確認するために行う検査です。リコールの対象となっている車が車検を受ける場合も、「車検検査該当項目」に沿って検査を行っています。車検検査該当項目にあてはまる部品がリコール対象となっている場合、リコールの修理対応が未実施であれば車検に通らないと考えてよいでしょう。

リコール対象となっている部品が車検検査該当項目に含まれなければ、修理未実施でも車検に通る可能性はあります。ただし、リコールの修理対応を実施しないまま車に乗り続けることは現実的ではありません。リコールの通知がちょうど車検を受けるタイミングで来た場合は、車検とリコール修理を同時に実施するユーザーも数多くいます。

また、重大性の高いリコール事案に特例措置が課されているケースもあるため注意しましょう。現在では、タカタ製のエアバッグに関するリコール対象車両で修理が未実施の場合、修理を実施しなければ車検を通すことができません。これは平成30年5月から実施されている、国交省の特例措置によるものです。

中古車もリコール対象に含まれる?

リコール対象となる車は、新車時から乗っていても中古車として購入したものであっても、関係なく修理を実施する必要があります。中古で購入した車もリコール対象となれば、車検証上の名義人にメーカーからリコールの通知が届くため、それにしたがって対応の上修理を行ってもらいましょう。

実際に起きたリコール事例

実際に発生したリコールの事例についてもみていきましょう。ここでは近年発生した自動車メーカーによるリコール対応の事例について2つご紹介します。

スズキの燃料タンク不具合によるリコール

令和2年(2020年)11月に発表されたリコール措置で、燃料タンクに不具合があったため、燃料残量警告灯が点灯しなくなる恐れがあるというものです。そのまま放置すると燃料切れに気づかず、ガス欠症状に見舞われ車が停止してしまう可能性もあります。対象はスズキの「アルト」「ワゴンR」などの計7車種、台数はおよそ770,000台という大規模なリコール措置となっています。

トヨタの燃料ポンプ不具合によるリコール

こちらも同年の令和2年10月に発表されたリコール措置で、低圧燃料ポンプの成形条件に不具合があり、変形する恐れがあるというものです。この変形によって燃料ポンプが作動不良を起こすと、走行中にエンジンが停止してしまう可能性もあります。
対象はトヨタの「アルファード」や「ノア」など、レクサスの「LS500」「RX300」など39車種、台数は210,363台となっています。

まとめ

1台の自動車は、約3万点の部品から構成されるといわれています。そのうち1点に見つかった問題点でも重大な事故につながる可能性があれば、メーカーは回避のため速やかにリコールを実施しなければなりません。
近年は複数車種での部品共通化が進み、生産面での合理化とコストダウンが実現しました。しかしその反面、部品共通化の影響で多くの車種にリコール措置が取られ、対象台数も増える傾向がみられます。
もしご自身が乗っている車のリコール通知が来たら、できるだけ早期に対応し無償修理を実施してもらいましょう。

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