バッテリー寿命によるトラブルを避けるためには、定期的にバッテリー交換することが大切です。
しかし、バッテリー交換のタイミングは、走行距離や環境などで変わってくるものです。前に交換してからいつバッテリーの寿命が尽きるかどうかは一概に測ることができないため、自分でバッテリーの状態を把握することが必要になってきます。
そこでこの記事では、バッテリーの状態を知るための検査方法や基準値として注目したいCCAについてお伝えします。
CCAとは
まず、CCAとは何か、について解説します。
CCAとは何か
CCAは「Cold Cranking Ampere/コールド・クランキング・アンペア」の頭文字をとったもので、そのバッテリーにエンジンを始動させる能力があるかを測る性能基準値です。
CCAは、摂氏-18度±1度の低温状態で、30秒後の電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値を表します。なぜ摂氏-18度±1度が基準になるのかというと、この温度はアメリカやイギリスで使われる温度の単位「華氏」ではちょうど0度に当たるからです。
CCAはおもにアメリカで採用されていましたが、最近は日本でも性能表示として使用するようになってきました。日本ではJIS規格に合わせて適格CCA規格が決められています。
※華氏0度は-17.8度ですが、CCAはJIS規格で「-18±1度の温度」(定格コールドクランキング電流)とされています。表記上ここでは-18度で統一します。
CCAを調べるとわかること
バッテリーの重要な目的はセルモーターを回しエンジンを始動することです。その際に多く電力を消費するため、短時間に大量の電流を流せる瞬発力があるかどうかがバッテリーの性能として重要になります。
CCAを調べるとバッテリーの始動性能がわかります。つまりそのバッテリーがどれだけエンジンを始動する力があるかが測れるのです。
具体的に例をあげると
- CCAが630Aのバッテリー:
-18度で630CCAの定電流放電を30秒間行なって、7.2V以上の端子電圧を維持できる - CCAが400Aのバッテリー:
-18度で400CCAの定電流放電を30秒間行なって、7.2V以上の端子電圧を維持できる
このように、CCAの値が大きいほどバッテリーに瞬発力がありエンジンがかかりやすいということです。
バッテリーが寿命になるとどのような異常が発生するのか
バッテリーが寿命になると、バッテリーの内外にさまざまな異常が発生します。
バッテリーの寿命による内部の変化
バッテリーの寿命は一般的には約3年といわれていますが、走行距離などの使用状況やメンテナンスによっても大きく変わってきます。
寿命が近づいたバッテリーの内部では、次のようなことがおこっています。
- 腐食による+極板の劣化
- +極の活物質の剥落
- サルフェーション(硫酸鉛が過剰に生成されることにより、正常な還元反応が妨げられてしまう)
- 浸透短絡(セパレータに極板の鉛が浸透することが原因で、+極板と-極板が短絡してしまう)
バッテリーが寿命を迎えたとき外部に現れる現象
バッテリーの外観に破損がなくても、バッテリーが寿命を迎えていることは少なくありません。見た目から推し量ることは難しいバッテリー寿命は、運転前や運転中のトラブルから推測することが可能です。次にあげるような状態は、バッテリーの寿命が原因である可能性があります。
- エンジンがかかりにくくなってきた
- ライトの強弱(エンジンをかけたときライトが暗くなり、アクセルを踏んだときライトが明るくなる)
- バッテリー液の減りが早い
- その他、クラクションの音が弱い、パワーウィンドウの開閉がゆっくりになったなどの変化
これらの現象はバッテリー寿命のほかに、充電システムの不具合、カーナビやオーディオ機器など後付け機器による暗電力の消費、バッテリーの放電などの原因でも起こり得ます。短絡的に「バッテリーをすぐ取り替えなければ」と思わずに、他の原因である可能性がないか検討しましょう。
CCA値でバッテリーの寿命を判断する基準
CCA値でバッテリーの寿命を判断するための、測定と診断について解説します。
テスト環境
前述したようにCCAは-18度±1度の低温状態で、30秒後の電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値です。しかし、実際に外気温をそれだけ下げるのは現実的ではないため、通常の気温で測り、計算によってバッテリー内部の電気伝導率を導いています。
測定前には、エンジンが停止している状態であることと、バッテリー液が入っていることを確認しましょう。また、走行直後だと正確な数値が出にくくなります。
CCA値の診断
CCA値の測定・診断は次の手順で行ないます。
- 測定したいバッテリーの「基準CCA値」を調べる
基準CCA値はメーカーや種類によって異なります。計測したいバッテリーの基準CCA値がバッテリー本体に記載されていれば手間が省けるのですが、記載がないこともしばしばあります。
そういった場合に基準CCA値を調べるには、バッテリーメーカーのカタログやホームページなどを参照するのが一般的です。
しかしメーカーによっては公開していないこともあります。その場合は、新品の際の実測値を仮の基準値とするか、JIS規格一覧表を参照します。
(あらかじめ基準CCA値がわかっている場合や、使用するバッテリーテスターに基準CCA値のデータが内蔵されている場合、JIS規格一覧表の参照は不要です) - バッテリーテスターでCCA値を測定する
バッテリーテスターの取扱説明書にしたがい測定します。 - 測定したCCA値と基準CCA値を比較して診断する
「測定CCA値÷基準CCA値」を計算し測定値が基準値の何%あるかを検討します。測定CCA値が基準CCA値の70%以上であれば、おおむね問題はないと考えて良いでしょう。
CCA値による計測のメリット
CCA値による計測には、ロードテスターによる計測にはないメリットがあります。
バッテリーへの負荷がない
ロードテスターは大電流を流すため、どうしてもバッテリーに多く負担がかかってしまい、場合によってはテスターにかけることでバッテリーの性能が劣化してしまうこともあります。
それに対してCCA値による計測は、バッテリーに負荷をかけずに計測値を導き出すことができます。
見せかけの電圧に左右されず測定できる
ロードテスターは電圧のみ計測するため走行によってバッテリーの充電状態が続いた場合に、一時的に間違って良好と誤判断してしまうことがあります。
CCA値による計測は、内部電気伝導率から算出するため、見せかけの電圧に左右されず測定が可能です。
サルフェーションなどを正確に判断
経年変化によってサルフェーションや電極板が劣化すると、電気抵抗が増えます。ロードテスターではこれらを正確に計測することは難しいのですが、CCA値は電気伝導によって診断するため、確実に判断できるというメリットがあります。
おわりに
バッテリーは消耗品なのでいずれは交換することになります。しかし、バッテリー寿命は状況によって前後するため、前回の交換からいつが寿命なのかというのは一概にはいえません。そのため、自分でバッテリーの状況を見極める必要があります。
自分でバッテリーの状況を確認する手段として、CCA値を測定し、本当にそのバッテリーが寿命かどうか確かめることがあげられます。その結果によって適切なバッテリー交換時期を判断することが望ましいでしょう。