O2センサーとは、O2(酸素)の濃度を検知するセンサーのことです。エンジンチェックランプが点灯する原因として、最も多いのがO2センサーの異常に関するものといわれています。そのため、自動車整備士であれば、O2センサーと関わる機会はかなり多いのではないかと思います。
そんなO2センサーですが、仕組みや点検の方法などを知らないという方も多いでしょう。
そこで今回は、自動車整備の基本でもあるO2センサーについて解説していきます。故障診断で必須といってもいい知識なので、ぜひ覚えておきましょう。
O2センサーとは?
O2センサーはその名のとおり、O2(酸素)の濃度を検知するセンサーです。
排気ガスに含まれる酸素濃度を検知することで、燃料が濃い(酸素が薄い)のか薄い(酸素が濃い)のかを判断します。
燃料が濃いか?薄いか?その基準となるのが理論空燃比(ストイキオメトリー)と呼ばれるもので、その理想的な比率は「空気14.7:ガソリン1」です。
この割合の混合気を作り出すことで効率の良い燃焼を生み出し、一酸化炭素などの有害物質の減少にも役立っています。
ちなみに、エンジン始動時やアクセル全開時などは空燃比を変化させることもあり、エンジンは常に理論空燃比で燃焼しているわけではありません。
エンジンの負荷が高い状況では濃いめ(ガソリン多め)に、負荷が軽い状態では薄め(ガソリン少なめ)の空燃比になる傾向にあります。
O2センサーの仕組み
O2センサーは、どのようにして酸素濃度を検知しているのでしょうか? O2センサーの仕組みを、詳しく見ていきましょう。
ジルコニア素子
O2センサーにはジルコニア素子が使われており、この素子は300度を超える温度下において、酸素濃度の差によって起電力を発生させる特性を持っています。
O2センサーはこの特性を利用し、発生する電力の差で酸素濃度を検知しているのです。
ECU間の仕組み
O2センサーが検知した酸素濃度の情報は、電圧としてECUに送られます。
この電圧の差をECUが読み取り、インジェクターに反映させます。
インジェクターは燃料を噴射する装置で、古い車でいうとキャブレターのような役割です。インジェクターへの信号を制御することで、燃料を薄くしたり濃くしたりできます。
つまり、「O2センサー→ECU→インジェクター」の順番で燃調を制御しているということです。
O2センサーの設置場所
O2センサーは排気ガスに含まれる酸素濃度を検知するために、エキゾーストマニホールドや触媒の前後に設置されています。
触媒より上側を上流、下側を下流とするならば、上流のO2センサーの役割は酸素濃度の検知がメインです。
対して、下流にあるO2センサーは触媒の劣化度合いの監視や、燃料の噴射量を微調整する役割を持っています。
O2センサーの劣化・故障
O2センサーは高温の排気ガスに常に晒されているため、カーボンなどの燃焼生成物が堆積しやすいです。
イメージとしてはスパークプラグと似ており、使用環境や使用時間によっては劣化や故障を起こす可能性があります。
具体的には、以下のような原因によって劣化や故障を引き起こすことがあります。
O2センサーの劣化・故障の原因
- 激しい振動により、センサーのシールやリード線の根元に隙間ができ、そこから水が侵入して故障する
- 熱によるダメージでジルコニア素子が割れてしまう
- エンジンオイルや添加剤といった不純物がセンサーに堆積し、故障する
基本的には堆積物による劣化が多いですが、熱で素子が割れてしまったり衝撃でリード線がちぎれてしまったりといった破損も起こり得ます。
劣化したO2センサーで走行し続けるとどうなる?
劣化したO2センサーは、走行にどのような影響をおよぼすのでしょうか? 主な影響を3つご紹介します。
燃費が悪化する
まず実感するのが燃費の悪化です。O2センサーが劣化すると、必要以上に燃料を濃く噴射してしまいます。つまり、ガソリンを無駄に消費しているということです。
燃費が悪化するだけでなく、理論空燃比から外れるため、パワー不足につながることもあるでしょう。
排気ガスが臭くなる
O2センサーが劣化すると必要以上に燃料を噴射してしまうため、不完全燃焼した臭い排気ガスが排出されてしまいます。不完全燃焼した排気ガスは臭いだけでなく、触媒の劣化にもつながります。
さらに、触媒が劣化することによって排気ガスを浄化する効果が弱まってしまい、結果的に排気ガスの有害物質量も増えてしまうのです。
エンジン警告灯が点灯する
O2センサーが劣化して車載コンピューターに故障と判断されると、エンジン警告灯が点灯してしまいます。
ただちにエンジンが停止するわけではありませんが、速やかなO2センサーの点検が必要です。
O2センサーの点検や交換時期は?
それぞれ以下で確認していきましょう。
点検・交換時期
O2センサーの寿命は一般的に5年以上、もしくは、走行距離8万km以上といわれています。基本的にはこれを目安に点検すればいいですが、O2センサーは使っていくうちに劣化していきます。
そのため、エンジンチェックランプが点灯するほどの明らかな異常がなくても、排ガスが臭かったり燃費が悪かったりする場合は、目安以下の時期でもO2センサーの点検をすることが大切です。
点検方法
O2センサーの点検は、「スキャンツール」という専門のツールで行なうのが基本です。個人でスキャンツールを持っている方は別として、一般的にはディーラーや整備工場へ点検を依頼することになります。
スキャンツールに接続すればどこが故障しているのかすぐにわかるため、ディーラーや整備工場へ依頼すればO2センサーの状態がすぐにわかるでしょう。
おわりに
今回はO2センサーとはなにか、また、O2センサーの仕組みや故障・点検時期について解説しました。
O2センサーは排気ガス中の酸素濃度を測定し、適正な空燃比を保つために重要なセンサーです。しかし、O2センサーは高温の排気ガスに晒されて不純物が堆積しやすいため、トラブルを起こしやすい箇所でもあります。
O2センサーの故障やトラブルは、自動車整備の現場ではよく目にするケースです。O2センサーの仕組みや故障の原因を知っておくと実際の整備にも役立ちますので、理解を深めておきましょう。