自動車整備に欠かせない道具であるメガネレンチ。自動車整備士を目指す方であれば、ご存知の方も多いでしょう。
そんなメガネレンチですが、思っている以上に多くの種類があり、作業内容によって使い分けが必要になってきます。
そこで今回は「そもそもメガネレンチとは何か?」を基礎から解説し、さらに種類や選び方などもご紹介していきます。メガネレンチの使い方や種類を覚えることは自動車整備の基本ですので、ぜひチェックしてみてください。
メガネレンチについて
そもそも、メガネレンチとは何でしょうか?すでにご存知の方も多いかと思いますが、まずは基礎から確認していきましょう。
メガネレンチとは
メガネレンチとは、ボルトやナットに掛ける両端の頭部が丸い円状(メガネ形)になっているレンチのことを言います。メガネレンチの他に、リングレンチといった呼ばれ方をすることもあります。
スパナとの違い
スパナはボルトやナットを2点で支持しますが、メガネレンチは6点で支持するためトルクを安定して掛けやすいという違いがあります。そのため、ボルトやナットが舐めてしまうリスクも低いです。
手が入りにくいような場面ではスパナが使いやすいですが、そうでなければできる限りメガネレンチを使う方が好ましいと言えるでしょう。
メガネレンチの種類・選び方
一口にメガネレンチと言っても、さまざまな種類が存在します。それぞれどのような場面で使うべきなのか?選び方も併せて見ていきましょう。
オフセットタイプ
オフセットタイプのメガネレンチは、左右のメガネ部分が持ち手に対して上下に曲がった形をしています。メガネレンチの中ではスタンダードな形状と言えるでしょう。
レンチをかける部分と持ち手の間にスペースができるので、奥まった位置にあるボルトを回したいときなどに重宝します。
ストレートタイプ
ストレートタイプのメガネレンチは、文字通り持ち手とメガネ部分が平らなストレート形状をしています。オフセットタイプでは持ち手の部分がぶつかってしまうような、非常に狭く奥まった箇所での作業に役立ちます。
ラチェットメガネレンチ
ラチェットメガネレンチは、メガネ部分にラチェット機構(一方向にのみ回る機構)を持ったメガネレンチです。ラチェット機構があるおかげで、レンチをボルトやナットに掛けたまま回し続けることができます。狭い箇所の作業で重宝するでしょう。
シノ付きメガネレンチ
シノ付きメガネレンチとは、片方のみメガネ形状の頭部を持つレンチのことを指します。もう片方は「シノ」と呼ばれる円錐状の尖った形をしており、鉄骨に差し込んで穴位置を合わせるなど、主に建築関係の作業で使われます。
打撃メガネレンチ
打撃メガネレンチは、その名の通りハンマーで打撃を与えて使うタイプのレンチです。片方のみメガネ形状をしており、もう片方は打撃を受け止めるためにフラットな形状をしています。
打撃によって大きなトルクを加えることができるので、大きな締め付けトルクを要する作業や、錆などで固着してしまったボルト・ナットを緩めるのに役立ちます。
メガネレンチの使い方
メガネレンチ概要や種類について理解した上で、肝心の使い方について確認していきましょう。正しい使い方を覚えることでボルト・ナットの破損を防ぎ、効率的な作業にも繋がります。
ボルト・ナットに合うタイプを選ぶ
まずは、ボルトやナットのある箇所に合うタイプのメガネレンチを選びましょう。作業箇所によって、オフセットタイプ・ストレートタイプなど使いやすいものを選択してください。
六角ボルト・ナットの二面幅寸法を確認する
ボルトやナットの二面寸法(互いに平行な二面間の距離)を確認し、それに合ったサイズのメガネレンチを使用しましょう。サイズが違うレンチで回そうとすると、ボルトやナットを舐めてしまう原因となります。
立ち上がり角度を確認する
立ち上がり角度とは、オフセットタイプのメガネレンチの曲がり角度のことを言います。作業箇所によっては、立ち上がり角度が適してしないと付近にぶつかってしまうことがあるので、避けられる角度のものを選びましょう。
隙間がないかを確認する
メガネレンチをボルトやナットに掛けた際、垂直に掛かっているか確認しましょう。斜めに掛かって隙間が開いた状態で作業すると、トルクがうまく伝達できずにボルトやナットを舐めさせてしまう可能性があります。
テコの原理を使い効率的に力を伝達する
大きなトルクをかけたいときは、テコの原理を使って効率よく力を伝達させると楽に作業できます。レンチの端を持てばテコが大きく働くので、軽い力で大きなトルクをかけることが可能です。
メガネレンチの取り扱いの注意点
メガネレンチの基本的な使い方は、上記の通りです。最後に、取り扱いの注意点についても確認しておきましょう。
規定以上のトルクでメガネレンチを使用しない
メガネレンチを使用する際は、規定トルク内での使用を心掛けてください。テコの原理を使って大きなトルクをかけようとパイプで柄を延長する方がいますが、それは規定トルクをオーバーした使い方となり危険です。
打撃や衝撃を与えない
打撃タイプでないメガネレンチにハンマーで打撃を与えたり、メガネレンチをハンマー代わりに使用して衝撃を与えたりする使い方はNGです。過剰な負荷によって、レンチが破損する可能性があります。
定期的な点検・メンテナンス
メガネレンチがヒビ割れ、変形、摩耗などを起こしていないか、定期的に点検・メンテナンスしましょう。こうした症状が見られるレンチの継続使用は危険なので、発見した場合は新品への交換をおすすめします。
おわりに
今回はメガネレンチの種類や選び方について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
メガネレンチと一口に言ってもさまざまな種類があり、作業箇所によって適したものを選ぶべきということでした。
使い方や使用上の注意については、整備に慣れている方であれば誰でもご存知の内容かと思いますが、慣れてくると誤った使い方をしてしまいがちです。事故やボルト・ナットの破損を防ぐためにも、今一度正しい使い方を振り返ってみましょう。